「幸之助さんが私の人生を変えた」と言う方は、松下幸之助氏の部下であった人はもちろん、パナソニック以外の方にも多い。「PHP Business Review松下幸之助塾2014年11月・12月号」には「生誕120年松下幸之助経営者としての凄み」とのテーマで特集が組まれている。冒頭エイチ・アイ・エスの澤田秀雄社長が、創業時代「人を活かす経営」の本で「如何に人を活かすか」「企業は人次第」との原点を学んだと言っている。社員1人ひとりがやる気を持って仕事に取り組んでいるかどうかで企業の業績は決まると。松下さんのすごいところは、仕事の出来る人も出来ない人も、やる気のある人もない人も、みんな抱え込むこと。誰の首も切らない。これも澤田氏は見習っているそうだ。
パナソニックの元社長や役員なども投稿されている。厳しい人との評判も多かったそうだが、心底「この人のためなら死んでもいい」と心から松下氏を信奉する社員が多かったと言う。それは「熱心に社員に語りかけ、ある時は叱り飛ばし、自ら手本を示して、地道に人づくりに徹した経営者」(河西辰男氏)だったから。元副社長で、現高知工科大学名誉教授の水野博之氏は「人の話を聞く姿はすさまじかった」と言う。印象に残るのは人の話を聞くときの姿勢。膝の上に手を当てて、姿勢を正して、じっと前を向いて頷きながら聞いてくれ、その姿勢を崩さない。少なくとも水野氏は、幸之助さんがあぐらをかいたり、足を組んで座ったりしたのを見たことがないそうだ。腕を組んだ姿も見たことがない。人の話を聞くときは、何時間でも、どんな若造の話でも、1時間でも2時間でも、ひざの上に手を当てて頷いて聞いてくれた。これだけでみんなファンになると言う。研修で幸之助氏の話を聞いた主任が、話に感動をし、営業所に帰り嬉々として仕事に取り組む姿を見て、上司や部下もどんな話があったか皆興味津々となる。それが営業所の活気につながり、空気ががらりと変わる。このことも幸之助氏に対する社員の評判の良さを物語っている。品質トラブルを起こして戦々恐々として幸之助氏に報告に行った人が「品質管理よりもっと大事なのは、人質管理やで」と。
「致知2014.11」の「致知随想」への投稿記事でも、現松下資料館顧問の川越森雄氏が「入社後の配属がPHP研究所だったのが不満だったが、新人研修で幸之助氏との懇談があり、雲の上のさらに雲の上の人が、頷きながら真剣に話を聞いてくれた時の感動を今でも忘れない。私たちが幸之助氏の虜になったことは言うまでもない。配属先に対する不満は吹っ飛び、この人の下で精一杯頑張ってみようと言う気になった」と。
人を大事に思う気持ち、その心からの気持ちがあれば、日頃の行動にも自然と現れるのだろう。言葉だけではなく、行動で示す。自らを省みて、自戒の念に捉われることしきり!
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