よいラガーメンよりも良い人間を育てる(帝京大学ラグビー部岩出監督)


滋賀県立八幡工業高校を7年連続花園出場に導き、その後、帝京大学ラグビー部監督に就任(平成8年)。平成22年に創部40周年にして初の全国大学選手権優勝。今年、史上初の5年連続制覇を実現した、帝京大学ラグビー部岩出雅之監督が「致知2014.10」のインタビュー記事に登場されている。優勝経験のなかった帝京大学を、様々な困難を経ながら育て上げてきた岩出氏の「リーダー哲学」は我々にも大いに参考になるものと思う。下記にその哲学を紹介する。

「ただ目の前の勝利だけ見ているのと、学生たちの未来まで見てあげているのとでは、彼らの将来はまるで違ってくる。学生時代というのは長い人生の中のたった4年間なので、そこで勝ったからと言って、後の人生で幸せになる保証があるわけではない。ですからいい学生生活を送るということは、単に勝ち負けではなく、目標に向かって成功も失敗も含めていい体験を積み重ねていくことが将来様々な力になっていくと思う。」

学生たち一人ひとりにしっかり心を配り、それに応じた導き方のできる指導者でなければならない。そのためにもこれまでのように指導者の考えとエネルギーばかりで引っ張るのではなく、彼らが主体性を持って行動していけるチームに転換していこうと考えた。その源は上級生の姿だ。上級生がよい手本になってチーム全体をよい方向へ導いていけるチームにしていこうと。具体的には、挨拶や掃除を4年生は率先してやる。自分のエネルギーを他者貢献に使うことで自己研鑽する姿を上級生が見せ、そこに刺激を受けた下級生たちも育っていく。そういうことが定着していったことで、優勝も、連覇も実現できたと思う。」

「指導者に努力や学習意欲のないチームには未来はない。指導者がこれぐらいでいいと考えたところで、学生たちの可能性を摘み、チームの歩みも止まる。だから指導者は成長し続けなければならないというのが僕の哲学だ。4年間がラグビーだけで終わるのではなく、指導者が未来をしっかり見据えて指導することで、社会に出て生きる力を育むことが出来ると思う。若い世代の可能性を大きく引き出す指導者でありたい。」

指導者に反発して傷害事件を起こし公式戦出場停止の処分を受けたり、単位不足で一人悩んで自殺した部員があったり、様々な経験の中から作り上げてこられた「岩出哲学」。時間がかかったとは言え、今では早稲田、明治も歯が立たない強豪校に育て上げた「岩出哲学」は、企業の職場での社員育成にも通じる話として受け止めたい

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