今、もの申さねば将来に禍根を残す!阿部政権のおごり!

日本の将来を大きく変える「安保法制法案」が、採決の時期を迎えようとしている。何の根拠もない「審議80時間ルール」を使って、7月中旬には衆議院を通過させると言う。世論調査では、安保法制法案への反対が過半数を占め、かつ政府の説明が不十分だと言う人が80%以上いる中での採決だ。今回の「安保法制法案」は11個ある。国民には分かりづらい法案であるから、安倍総理も国民に丁寧に説明すると何度も言っている。常識的に考えると、無理やり「80時間ルール」を使うとしても880時間が必要と計算できる。

それにしても、安倍政権は、国民の意見を聞く耳を持っているのだろうか大いに疑問に思える。昨年12月の機密保護法案にしても、「いくら国民に説明しても分からない」とでも思っているのか、パブリックコメントの多くの反対意見にも何のコメントもせず、揚句は郡山市で公聴会を開き、反対意見が多くを占める中、見向きもせず翌日衆議院で採決を強行した。今回も、公聴会を開くことになるが、憲法審査会での全員(3人)「違憲」との判断にも、人選ミスとの判断で、全くまともに聞く姿勢も持たない安倍政権は、今回の公聴会も、形だけのものにするつもりと思える。ここまで国民の声を無視する政権に、黙っておられない。

このような状況下での、「文化芸術懇話会」でのマスコミ批判、沖縄批判発言だ。「80時間ルール」判断には、このような問題に対する追求時間も含まれているのだろうか?安倍総理の国会答弁も、同じことを何度も繰り返して、委員長から「答弁は簡潔に」と注意される始末。質問者の質問時間を浪費させるためのようにも思える。国民に分かりやすく説明するとの言葉に嘘がないなら、もっと答え方があると思われる。ある質問者は「私に答えるのではなく、国民に答えるつもりで」と言っていたのには思わず苦笑せざるを得なかった。

これまで、政治の問題にはあまり触れずに来たが、今回の「安保法制法案」の採決に至るプロセスに関しては、あまりにも強引・拙速で、今物申さねば将来の日本、ひいては子ども、孫の将来世代に禍根を残し、後悔するとの想いで、敢えて書くことにした。

6月30日の日経朝刊19面のコラム「大機小機」に「政権基盤固めた自民党の危うさ」との記事があった。「文化芸術懇話会」の発言の件と、ゆうちょ銀行の限度額引き上げの二つの問題を通して、3つの問題を指摘している。

  • 「長期安定政権なのだから、これまでできなかった大抵の事は今回は出来る」とのおごり。
  • 自民党を支えてきた既得権集団の利益擁護。
  • 将来の日本を構想する気概・能力、将来世代に対する責任感の乏しさ

3つ目は、骨太の方針における歳出削減、特に社会保障制度への切り込みがなく、将来の日本を担うべき若年層への教育、就業、子育て支援に十分に資金が回らないことを指摘している。

年金情報漏れの対応費8億円も保険料と税金で補うとのこと(安倍総理答弁)。企業の常識では、社長以下責任者が給与返上などの対策を講じないと株主は納得しない。新国立競技場問題もひどすぎる。

1強政治は、日本のためにも、自民党の為にもよくない。とはいっても今の野党に政権を担う実力はない。政権与党が緊張感を持って政権を担当するようにするためにはどうしたらいいのだろうか?悩ましいことだが、今の自民党の「おごり」には我慢できない。みんなで考えたい。日本の将来世代のために。

「論語」が幼児教育に効果発揮?!

「論語を教育に使うと効果的」との記事が最近目立っている。局所麻酔での脳手術、覚醒下手術の第一人者である駒込病院外科部長篠原伸禎氏の対談記事(筑波大学村上和雄教授との)が「致知2015.7」に掲載されている(「脳を知れば人間の可能性が見えてくる」)。覚醒下手術では患者の反応を確認しながら手術を進められる。その手術中に、側頭葉の中にある右の扁桃体に近づくと普段おとなしい女性でも怒鳴りだし、左の扁桃体に近づくと逃避的になり、大人しくなるのに気づく。それを見て、どうも人間の精神と言うのは脳の一つの法則性に基づいているのではと思われたそうだ。さらに最近分かったのは、脳の真ん中にある帯状回というのが扁桃体をコントロールし、突然キレたり、パニックになったりする動物的な本能を司る大脳辺縁系が暴走するのを防いで、人間的な大脳新皮質とのバランスを取るようにしている。そのバランスを取るために「論語」を学ぶことの有効性を主張されている。動物的な脳(扁桃体)は、食欲や性欲など生存に必要な基本的欲求を司っているが、それに巻き込まれると歯止めが利かなくなり、無差別殺人などの悲劇を起こすことになる。その扁桃体をコントロールする学問が「論語」であり、「仁・義・礼・智・信」を修めることと言う。

同じ「致知2015.7」に、神奈川県横須賀市にあるオンリーワン幼稚舎園長の志道不二子氏の「我が国の伝統を継承する真の国際人を育てる」とのインタビュー記事と、「出会いの縁で育ちの種は開花する」との福岡県久留米市の荘島幼稚園園長堤孝雄氏の投稿記事、さらには「PHP松下幸之助塾2015.7-8」の連載「朝倉千恵子の社会を変えたい人列伝」の6回目のゲスト箕面・学問の道「時習堂」館長/平成こども論語塾講師の北山顕一氏の「10畳の空間だから伝えられることがある」で、子どもたちの教育に「論語」を使い、人気を博しているとの話が掲載されている。

共通するのは、「論語」などの古典を読むことによって、人間として大切な思いやり、仁の精神を学ぶことを目的としていること。意味は分からなくても、言葉や文章のリズムが、知らず知らずのうちに園児たちのこころの奥底に刻み込まれ、長い人生の中で逆境や危機を乗り越える力になる。親を思う「孝」を覚え、思いやりの行動で親をも変えると言う。

北山氏の塾では小学生10人ほどが半年に12回10畳の空間で学ぶ。論語をベースに、何が悪いか良いか、自信を持って自分で判断できる人間になること。最初は論語の何か全く知らなかった子が、2回目からは、親に無理やり連れてこられるのではなく、親を引っ張って塾に来ると言う。

企業においても政治においても「己の欲望にために他人を犠牲にする」ことで起こる事件が頻繁に起こる。これからの日本を担う子供たちの教育、育成に全精力を注ぐ人達が全国で活躍されている。応援したい。

“お客さま満足”を行動理念として持ち続けた経営者福地さん(元アサヒビール)

アサヒビール、NHK、新国立劇場、東京芸術劇場のトップを歴任された福地茂雄氏がこの度本を出版された。「お客さま満足を求めて」(毎日新聞社刊、2015.3)だ。新聞で本の出版を知り、私のテーマとも言える「お客さま満足」の言葉に惹かれて購入した。

アサヒグループの経営理念

「アサヒビールは、最高の品質と心のこもった行動を通じて、お客様の満足を追求し、世界の人々の健康で豊かな社会の実現に貢献します」

この経営理念の柱は「お客さま満足」。アサヒの会長・社長の他にNHK会長など全く違う業種も経験されたが、常に経営判断の拠り所は「お客さま満足」で、業界は違っても、この信念に従って行動すれば自ずと道は開かれると福地氏は言う。

アサヒビールが、プロダクトアウトからマーケットインに軌道修正を始めたのは、アサヒビールのシェアがどん底で、「夕日ビール」と揶揄されていた1984年頃。当時の村井社長が米国視察でジョンソン・エンド・ジョンソンを訪問した際、「Our Credo(我が信条)」に触れ、優れた企業には優れた企業理念があることに感銘を受け、「お客さま満足」の考えが初めて経営理念となって謳われた。これが契機となって、5000人の消費者の試飲調査が始まり、お客様の声が「アサヒ生ビール(コクキレビール)」の開発を生み、各部門・全社員の努力の結晶「アサヒスーパードライ」(樋口社長時代の1987年発売)を生んだ。味はメーカーが決める(工場ごとに味が違っていたそうだ)考え方を、「味はお客さまがきめる」と言う、今では当たり前の考え方に変わっただけだが、アサヒビールがそれで蘇った

福地氏が社長時代の2001年には発泡酒への参入を決断した。アサヒスーパードライのシェアを奪いかねないビールまがいのものを出すのに、社内もマスコミも否定的だった。が改良を重ねるにつれ味も良くなり、お客さまに自信を持って出せる商品は出すべし、むしろ出さないことは「お客さま満足」の追求にもとると参入決断されたそうだ。これが「アサヒ本生」で、大ヒット商品になった。

NHK会長時代、最も記憶に残っているのは、2010年の大相撲野球賭博事件で、相撲中継を継続するか中止するかの判断を迫られた時。この時の判断基準も「お客さま満足」。放送中止を求める声が16000件、継続は8000件だった。大相撲のLIVE中継は中止し、相撲を見たいと言う視聴者の声も考慮し、夕方6時台にダイジェスト版を放映した。

東京芸術劇場経営では、2011年3月末に開催予定のコンサートの切符2000枚が完売されていた時、東日本大震災が発生。日本国中がすべてのイベント自粛の大きなうねりの中、チケットの販売後でコンサートを自粛しても得られるのは自己満足だけで、お客さま満足ではないとの結論で予定通り実施した。そしてチケット料金は全額東北の被災地に寄付をすることを、コンサートは始まる前にお客さまに説明し、顧客からは大きな拍手を頂いた。

福地氏は、アサヒにおいても、NHKにおいても「3現主義(現場で、現物を、現実に)」を徹底し、部門間の連携や、適材適所の人事政策など、いろんな改革をしつつ、「お客さま満足」を基軸に決断をしていかれた。アサヒ時代には、環境問題にも力を入れ、全工場「廃棄物ゼロ」を達成し、広島県には「アサヒの森」を作られた。

独善、独断ではなく、確信を持って決断するための方策を講じながら、「お客さま満足」を軸に歩まれている福地氏に共感できることが多い。

冲中一郎