企業理念に基づく全員経営(オムロン)

朝日新聞で2016年9月からほぼ毎週月曜日、時代の変化に合わせて変わろうとしている企業を紹介している「カイシャの進化」の特集記事がこの3月末で終了した。これまで、トヨタ自動車、日立製作所、NTT、GE,ソフトバンクグループ、星野リゾート、日本電産、ニトリ、虎屋、すかいらーくなど多岐にわたって、会社の歴史や今の姿、これから目指す未来の姿を企業ストーリーとしてまとめ、悪戦苦闘しながら変わろうとする会社の実像を描いている。今回、先月3月20日に紹介されているオムロンの記事を紹介する。

タイトルは「“よりよい社会”理念が命」。2000年代前半、ITバブル崩壊後苦境に陥ったオムロンは、それまでは創業家社長が当たり前だったが、当時社長の創業者三男立石義男氏が、グローバル化しつつあったことも考慮し、いつまでも「立石家」ではなく、これからは“企業理念”に基づく運営をと、初めて非創業家の作田久男氏に社長を譲った。そして、2006年の創業記念日、義男氏は、「企業は社会の公器である」を企業理念に据え、こう宣言した。「企業の求心力を、創業家から企業理念に変えていく」と。そして、さらに2015年、企業理念を今の形に変えた。その考え方は「“何のために仕事をするのか”、それを考え、実現すれば強い会社になれる」。今の企業理念を掲げておく。

Our Mission(社憲)

われわれの働きで、われわれの生活を向上し、よりよい社会を作りましょう。

Our Values

  • ソーシャルニーズの創造:私たちは、世に先駆けて、新たな価値を創造し続けます。
  • 絶えざるチャレンジ:私たちは、失敗を恐れず情熱をもって挑戦し続けます。
  • 人間性の尊重:私たちは、誠実であることを誇りとし、人間の可能性を信じ続けます。

インドネシアの工場では障がい者を積極的に採用している。「政府の要請もあるが、オムロンの企業理念の実践のために重要な取り組みだ」とインドネシア工場の社長は言う。オムロンでは子会社も含めて企業理念が徹底され、全世界で行動に移すべく仕掛けもある。2012年に山田社長が始めた「TOGA(The Omron Global Awards)=オムロン世界賞」で、世界の社員が企業理念に基づくテーマでの仕事を宣言し、そのプロセスや成果を1年がかりで競う。地域ごとに役員も含めての選考を経て、5月10日の創立記念日に表彰される。テーマには、社会課題を解決するものもあり、新ビジネスとしても期待されている。今年は世界中の延べ4万6千人から5千のテーマが寄せられた。毎年増え続け、今年は社員数の3万8千人を超えた応募だそうだ。

山田義仁社長は、「大企業でも社会に必要とされなくなればつぶれる時代。オムロンも理念を忘れれば淘汰される。逆に、みんなが理念を意識した仕事をすれば、どんな波も乗り越えられる」という。社会の課題をいち早くとらえ、解決策を売り出せばビジネスにつながる。そんな取り組みが次々に生まれるような挑戦を社員に促している。

当ブログでも、CSV経営(http://okinaka.jasipa.jp/archives/4857#comment-650)や、SDGsに配慮した投資などの動き(http://okinaka.jasipa.jp/archives/6070)を紹介したが、これまでのCSR活動とは違い、社会課題の解決がビジネスに直結する経営が社会や投資家から求められるようになってきている。オムロンのように「社会が求めている明確な理念を打ち立て、全社員がその理念に基づく行動をとる」ことが今の激しい時代の変化に追随できる道かもしれない。