都内有数の進学校都立小山台高校がなぜ強くなったのか(高校野球)

人間学を学ぶ月刊誌「致知」の「致知随想」記事は、信じられないような苦難を経ながら志を忘れず成功した人たちの物語が毎回綴られている。いつも真っ先に読んでいる。今回2016.4号に「大輔が残したメッセージ」と題して、東京都立小山台高校野球部監督福島正信氏が投稿している。2014年の春の選抜高校野球に21世紀枠だったが小山台高校が出場した時は私もびっくりした。新日鉄住金にも幹部など小山台高出身者が数多くいる。

「大輔」は、2006年当時2年生で唯一のレギュラーだったが、先輩と一緒に新しいバットを買いに行ったその帰りに、当時マスコミを賑わせた自宅マンションのシンドラー製エレベーター事故に巻き込まれ帰らぬ人になった。何事もコツコツと一生懸命取り組み、誰からも信頼される選手だった。当時は、小山台は都内有数の進学校で、練習スペースも時間も限られており、甲子園はおろか上位進出さえ難しいチームだった。あの時、大輔にバットを買いに行かせなかったら・・・、事故後監督も生徒も悔しくて悲しくて涙が溢れ、練習もままならなかった。その時、再び前を向いて一歩を踏み出す力を与えてくれたのが、大輔のお母さんだった。「皆さん、悲しい顔で練習をしていたら大輔が泣きます。だから笑顔で練習してくださいね」との手紙。そして大輔の野球日誌の「エブリデイ・マイ・ラスト」「1分1秒悔いのないように生きる。精一杯生きる」などの言葉に、全員「泣いてはいけない。大輔の為にも笑顔でプレーしよう、毎日を精一杯生き、絶対に甲子園に行こう」と、チームとしての絆が深まり、必死に練習に励むようになったそうだ。試合のたびに赤とんぼがベンチに飛び込んでくる話(大輔の変わり身)も織り込みながら、何事にも一所懸命取り組み決して手を抜かない、大輔が教えてくれた生き方が、小山台高野球部の伝統的精神として根づき、目に見える結果として表れるようになった。そして2009年と2012年の夏の東京大会で準々決勝まで進出。そんな中で、2014年1月春の選抜高校野球に21世紀枠として選ばれたとの報が飛び込んできた。結果は初戦敗退だったが、その悔しさを胸に、21世紀枠選出にふさわしい実力、≫品格を備えたチームになろうとあらためて誓い合うことが出来たと監督は言う。実際2015年夏の東京大会でも準々決勝まで進出している。

何よりもこの記事に驚いたのは、「人間、志を持つことによって、こうまで変わることが出来る」のかという事。リーダーの役割にも注目した。大輔のお母さんの言葉をきっかけとして掴み、大輔の遺した言葉をもとに、「何事もコツコツ努力する先に光がある」と選手たちの心の持ち様や、日常の基本姿勢の大切さを、以前にも増して強調するようになり、監督との信頼関係がより増幅し、世間も驚く成長を見せた。

同じ目標に向かって、みんなが一致してあるべき方向にやる気が集中すれば何でもできる」、このことを実現した小山台高校野球部のみんなは社会人になっても、目標に向かってあきらめず頑張れることと思う。小山台高校野球部頑張れ!

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“フェアトレード”製品が世界的に拡がっている!

前稿で「社会的インパクト投資」(http://okinaka.jasipa.jp/archives/4496)を紹介した。同じ日経朝刊1面の連載記事「新産業創世記~課題に挑む4」(3月3日)にイギリスを中心に広がりつつある消費者の消費性向「フェアトレード」について掲載されていた。同記事の中に以前当ブログでも紹介した「人を幸せにする経営=コンシャスカンパニ―」(http://okinaka.jasipa.jp/archives/1718)米国自然食品スーパー、ホールフーズ・マーケットも紹介されていたので興味を持って読んだ。

世界で消費者の行動が変わってきた。先進国では必要なモノは満たされて物欲は薄れ、むしろモノを減らして暮らす生き方に注目が集まる。物を買うにも、誰かの犠牲の上に成り立った「安さ」より、自分の価値観に照らし、正しいと思える商品を選ぶ人が増えた。

また、下記のような表現もある。

消費者が自らの信条に沿った製品を選ぶ動きが広がっている。環境にやさしく、途上国の持続的な発展につながるフェアトレード。

この事例として、岡山にあるカジュアル衣料大手ストライプインターナショナルが紹介されている。該社はファストファッションで成長したが、その担い手は新興国の工場だ。2013年にバングラデシュで縫製工場が倒壊し千人以上が亡くなる事故が発生。劣悪な労働環境が明るみに出ると批判の矛先はアパレル産業に向った。そこで、2014年に該社は「ビジネスモデルを変えるしかない」と腹を括り、「着る人も、作る人も幸せになる服」との理念の下、児童労働や強制労働、公害のない工場とだけ取引することにし、中国を含む海外の工場(1000社以上)を綿密に精査し、取引工場を選んでいる。ブランド名は「KOE」。まだ日本では浸透していないが、「フェアトレード」が拡がる欧米で普及を目指している。

ホールフーズ・マーケットは、株主価値の最大化を信奉する米国で、それとは一線を画し従業員の幸福、共同体や環境への配慮を優先する企業として紹介されている。価格は他のスーパーよりは2~3割高いが、理念に共鳴した消費者が支持する。

フェアトレード認証製品(国際フェアトレードラベル機鋼(FLO)による認証)の世界市場は約7200億円で、10年で7倍強に拡大したと言う。スターバックスは倫理にそぐわない調達先から購入しない方針を表明。ネスレも調達先に社会福祉や医療も提供する。日本市場は約80億円で、世界市場の1%ほど。先進校である英国の30分の1、ドイツの12分の1にとどまる。しかし、日本でも震災を契機に世界とのつながりを意識し、生産地を気にする人は増えているという。イオンも2004年にフェアトレード商品の販売を始め、全社の取り組みに拡げているそうだ。大量消費社会の申し子のイオンも変わろうと動く。

「社会的インパクト投資」や「フェアトレード製品の販売」などでイギリスが積極的に動いている。原発や武器輸出でGDPを伸ばすことよりも、GDP(消費)の中身(質)での競争が、新興国も含めた地球規模の発展につながるのではなかろうか。

“社会的インパクト投資”が世界に広がる???

2月29日の日経朝刊1面「新産業創世記~難題に挑む2」の記事の中の一文に「“社会的インパクト投資”が世界に広がる」とあった。2013年のG8(主要8か国首脳会議)で英キャメロン首相が普及を呼びかけ脚光を浴びた言葉らしい。インターネットで調べると定義は

教育や福祉などの社会的な課題の解決を図ると共に、経済的な利益を追求する投資行動

とある。記事では、塩釜市の「愛さんさん宅食」を紹介している。東日本大震災で身寄りを亡くしたり、家族が県外に働きに出たりして残された高齢者を支えるために食事を宅配する2013年に立ち上げた会社だ。50人の従業員はシングルマザーや障害者。従業員の訓練や、調理や配送の効率化を行い、採算ラインに乗ってきたと言う。同社を支えるのがビジネススクール大手グロービスの堀義人代表が立ち上げたファンドだ。「社会に与える前向きなインパクトと事業収益の両方を考えた。」と言う。

利益成長のみを追うベンチャー投資とも、見返りを求めない寄付とも違う。前稿で紹介したインドの「ナラヤナ・ヘルス病院グループ」のビジネスモデル(http://okinaka.jasipa.jp/archives/4478)も「インパクト投資」になるのだろう。昨秋、英ロンドン市場に上場したザ・ジムグループ。英国内の低所得地域に約70のフィットネスジムを運営する。一般的なジムの4分の1と言う格安料金と、定休日なしの24時間営業という利便性で低所得者に健康維持の手段を提供している。会員数37万人超、時価総額約410億円の企業に育った。インドで、農業や教育など貧困層向けビジネスに投資するアビシュカール(ムンバイ)も躍進している。CEOビニート・トライ氏が100ドルで始めた会社が今ではシスコシステムズなど役50社から200億円強を調達する企業となった。世界でのインパクト投資の規模は約7兆円弱、平均収益率は年6.9%、2019年には57兆円の規模に拡大するとの予測もあると言う。

このようなインパクト投資が広がる背景は、前稿ハーバードの事例研究テーマでも述べたが、リーマンショック後の投資家の意識変化で、「20~30代の投資家は資金の使い道に社会的意義を求めるようになった」とJPモルガンでインパクト投資を率いるトミー・ぺル氏は言う。さらに英有力投資家は「世界ではこれまでになく貧富の格差が広がっている。だが政府にはこの問題を解決するリソースがない」と。英国では、逼迫する財政のもとで、貧困層支援などの社会福祉事業をいかに効率的かつ効果的に実施するか、という問いへの答えとして政府が積極的にインパクト投資を推進しているそうだ。

インターネットで調べると、日本においても「G8インパクト投資タスクフォース日本国内諮問委員会」が2014年に設立されている。複雑化する社会課題への対応や財政改革は喫緊の課題であり、インパクト投資の手法を活用した、より効果が高く効率の良い公共サービスを推進するための活動を目論んでいる。