「日本の課題」カテゴリーアーカイブ

地域再生も市民が主役!

コミュニティデザイン手法を用いた地域再生への模索をテーマにした、NHK総合「クローズアップ現代」を見た(10月18日)。人と人との“つながり”を広げることで活力を生み出すという「コミュニティデザイン」、その第一人者の山崎亮さんは、これまで20の自治体を成功に導き、現在、全国から依頼が殺到している。ポイントは、住民自らに課題や魅力を発見させ、自分たちの手で解決法を考えさせることだという。

延岡市は、他の地方都市と同じく、駅前はシャッター街化、建物の20%が空き家となっている。この年に山崎さんが呼ばれ再生プロジェクトを始めた。市民100名以上が加わり、対策を練ったが、合言葉は「市としての誇り(Civil Pride)を取り戻せ!」。

山崎さんの成功例の紹介もあった。私の地元瀬戸内海の島「家島(姫路市)」の再生への取り組みである。昔は、山から土石を切り出し、関西国際空港などへの提供で活気があり、大金持ちもいたようだが、今は過疎化がどんどん進み、島の行末が懸念される状態にあった。「島としての誇り」を取り戻すために学生を派遣し、魚を食べさせたりしながら、島の誇りを島の住民に気付かせる活動をした。実際、活きのいい鯵など、魚や海苔は家島独特の味があり、学生たちもその味に舌鼓を打った。そして島の人たちは、誇りを取り戻し、NPO法人まで作って、町の活気を取り戻したそうだ。兵庫県三田市も人と人との絆を求めて、いろんな行事に多くの人が集まり活況を呈しているとか。

延岡市も、市民が議論を通して、市の誇りに気付き、空き家での市民のいろんな集まりの提案や、空き地でのコンサートなどなど、市民主体の提案が出て動き始めたそうだ。

今、国や多くの企業も大変な状況下にある。が、危機を脱するためには、国民自身が国の誇りに気付き、自らが強い思いを持って自主的に動くこと、社員が会社の誇りに気付き、自らその気になって会社の活性化に動くことが重要である。主人公は、一国の総理ではない、社長ではない、国民、社員そのものの意識と行動力がなければ変わらない。

延岡市も企業城下町で、市のことは企業と行政に任せきりだったため、不況に巻き込まれてもどうしようもない厭戦気分が漂っていたが、市民活動で蘇りつつある。番組から、大きな教訓を得た。

「もったいない」を世界語にしたマータイさんご逝去

日本語の「もったいない」を用いて環境保護の大切さを訴えられた、ノーベル平和賞受賞者(2004)で、ケニア人のワンガリ・マータイさんが25日亡くなられました(71歳)。

女性の地位向上と環境保護への貢献を認められ、2004年にノーベル平和賞を受賞され、翌2005年国連の「女性の地位委員会」閣僚級会合で、日本語の「もったいない」を環境保全の合言葉として紹介し、会議の参加者と共に唱和されたとか。マータイ氏は「もったいない」は、消費削減(Reduce)、再使用(Reuse)、資源再利用(Recycle)、修理(Repair)の四つのRを表している」と解説し、他の言語にはこの様な言葉が無いことを示された。昨年2月には来日され、皇太子ご夫妻と面会され、日本でも地球環境問題への取り組みに精力的に活動されました。

日本語が英語化したものとして「津波(tsunami)」、「切腹(harakiri)」、「過労死(karoshi)」、「おたく(otaku)」、「変態「hentai」」など、必ずしも誇らしいとは思えない言葉が多いが、「もったいない」は日本語の素晴らしさを自信を持って言える言葉ではないでしょうか。日本人ではなく、ケニア人が世界に紹介してくれたのも意義深いものがあります。

世界最古の国である日本が育んできた日本語は、英語などに比しても、深く味わいのある言葉が多いと言われる。「いただきます」「ごちそうさま」も、人が人として生きる上での、神々、大自然、食材、生産者、料理人などに対する感謝の気持ちを表す美しい言葉と言えます。漢字文化も、中国からの輸入と思われますが、中国の和製漢語研究者の曰く「日本語から借用した外来語は驚くほど多く、社会科学・人文科学方面の用語のおよそ7割は日本から輸入したもの」と。化学、情報、理想、文化・・・などなど。

日本語の価値を教えてくれたマータイさんに感謝すると共に、合掌!(内容の一部は、竹田恒泰著「日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか(PHP新書)」から流用しています)

サステイナブル社会への宣言

昨日(21日)、台風15号首都圏直撃の中、日経BP主催の「東京国際環境会議」が芝公園のメルパルクホールで終日実施された。生物多様性条約事務局長や英国の運輸大臣、日本の林野庁長官なども出席され、この世界を未来永劫持続させるための種々の取り組みが紹介された。

企業ではシーメンス、住友ゴム、サントリー、三井物産、マツダ、レモンガスなどから講演があった。

まず住友ゴム。タイヤ事業が85%を占めるが、その中でタイヤの石油外天然資源化(Ex.合成ゴムから天然ゴムへの転換など)が進められている。一般的にはタイヤには56%の石油資源が使われているが、2006年には30%、2008年には3%を達成し、2013年には0%化を達成する予定だとか。燃費を10%向上させる「50%転がり抵抗タイヤ」も2015年には発売予定。「ランフラットタイヤ」という走行中に完全パンク状態になっても、時速80Kmで距離80Km走行可能なタイヤも開発しており、私も知らなかったが、スペアタイヤが必要ない時代が来つつあるとのことでした。これらの素材開発のためにSpring-8やスーパーコンピュータ”京“を駆使しているとか。このような開発で、タイヤに関わる排出CO2量を2020年に2005年比25%削減を達成したいと言う。別子銅山をはじめ全国で郷土の森づくりにも取り込んでおられます。

サントリーは水の会社。地下水が枯れれば会社の命はない。そのため、全国13か所、7000haの「天然水の森」を整備し、地下水の確保を行っている。我が国は、世界有数の森林率を誇り、そのため、地下水も豊富(日本の森林率68.5%、世界平均は31%)。しかし、林業が成り立たず、山を放置していると、どんどん本来の森の機能が失われ、地下水も枯れていく。そのための森林保護活動を地元と一緒に熱心に取り組んでいる。

三井物産は、北海道を中心に74か所、44,000ha(国土の0.1%)という広大な森林を100年に亘って保有している。昔は林業として始まった森の保有も、最近は赤字経営。だが、2006年に、社会的使命を受けて、今後も保有を続けるとの決議をされたとか。そして、子供たちに間伐経験をさせたり、公共材(Ex.京都の大文字焼の薪)の提供などの活動を展開している。

コトラーの「マーケティング3.0」の訳者、早稲田大学恩蔵教授は、製品中心(1.0)から顧客中心(2.0)、そして人間中心のマーケティング(3.0)に移ることを提案されている。すなわち自社の利益だけではなく、製品・サービスの社会的価値を重視し、世界をよりよい場所にするために、企業単独ではなくステークホルダー全体のコラボレーションを重視する方向に進むべしとのこと。事例として大阪の小さな運送会社エコトラック社は保有トラック70台を思い切ってすべてCNG(天然ガス)化することを決意し、投資したところ、パナソニックから大型案件が舞い込み、事業としての収益性を確保しつつ、双方で環境サステイナビリティに対応している。サッポロ生ビール缶には、CO2排出量が明示(カーボンフットプリント)されている(295g).消費者の環境意識が高まりつつあり、このような表示が増えていくものと考えられる。

今年は「国際森林年」の年、森に対する認識をもっと高めてほしいと林野庁長官も訴える。世界、日本、そしてこれからの世代のためにも!