「日本の課題」カテゴリーアーカイブ

観光立国日本を目指して

昨日新高輪ホテルで日経主催のWTTC(World Travel & Tourism Council)グローバルサミットプレシンポジウムがあった。4月に第12回グローバルサミットが初めて日本で開催される(東京と仙台)ためのプレシンポジウムという位置づけだった。小泉首相時代の2003年にツーリズムを21世紀最大の産業とすることを目標として、外国人の日本への招致を拡大するために「観光立国日本」を打ち上げた。観光の生産への波及効果を含めて53兆円(2009:GDPの10%近い)の経済効果を生んでいるそうだ。しかし、なかなか成果の伸びが思わしくなく、「どうやったら外国から観光客を呼び込めるか」をテーマに「世界が誇る日本の観光資源の強み」に関するパネルディスカッションが面白かった。

まず長野県の小布施を世界に紹介し、元気にしたセーラ・マリ・カミングス氏(現株式会社枡一市村酒造場代表取締役)の話は会場を沸かした。ペンシルバニア大学を出てすぐ来日。1年間留学のつもりで来たが、小布施の魅力に取り込まれ20年近く居ついてしまったそうだ。葛飾北斎の小布施にしかない肉筆画や、400年の歴史を誇る栗菓子に魅せられ、栗菓子を扱う小布施堂に入社しつつ、利き酒師の認定を受け、葛飾北斎とそのパトロンが飲んだという酒造会社の復興に尽力した。その会社が現在代表取締役を務める枡一市村酒造場だ。当初は4人しかいなかった蔵人も、今では若い人も増え、小布施の酒として世界にアピールできている。その後も、毎月ゾロ目の日に開催している小布施ッション、今年10周年を迎え、参加者8000人、ボランティア1500人を抱える小布施見にマラソン(今年は7月15日開催)など多彩な行事を実施している。外国人の参加も多いそうだ。また「小布施は農業が基盤」として、米つくりにも挑戦、無農薬野菜にも取り組んでいる。何かをやると言えば「ダメ」と言われるが、手を挙げなければ「タメ」(手を挙げずにやればいい)、「×」は横に倒せば「+」になると、ともかく苦しみながら前向きに挑戦してきた姿勢を「ギャグ」で表現。

テレビでおなじみの涌井雅之東京都市大学教授は言う。1980年以降心を豊かな方が、モノが豊かな方よりいい、ものを売る時代からライフスタイルを売る時代に変わってきている。1国で、こんなに豊かな景観を持っている国はない。感性を刺激するライフスタイルを求める世界のアクティブシニアは日本を好いている。

パネラーのANAの常務が、セーラさんの話に共感をし、機内のお酒に小布施の酒を採用したいと宣言するハプニングもあったが、強み、良さを知るには、外部の人を招き入れるのが最も手っ取り早いのかも知れない。価値観の違いを認め、差分から強み、弱みを知る。これは自分の会社の強み、弱みは他社との差分を認識できなければ分からないのと同じことと言える。自分の強みもいろんな人との付き合いの中で分かってくる。昨日はセーラさんの話を聞けて、大きな人生のヒントが得られたが、日本の産業が縮退必至の時、観光事業についても、日本人自ら日本の良さをアピールせねばと思う。

世界人口70億人に!

26日国連人口基金(UFNPA)が世界人口白書を発表した。10月31日に世界の人口が70億人に達するらしい。1987.7に50億人、1999.10に60億人、その後12年で10億人が増えたということになる。2050年には93億人、2100年には101億人との予測もある。1800年中頃はせいぜい数億人だったのが、産業革命や医療革命で爆発的に増えたそうだ。10月31日誕生予定が21万人、そのうち日本は2900人(どこかに申請すれば70億人目との認定証が出るらしい)。

一方日本の人口は、2010年の国勢調査の結果、初めて減少に転じたそうだ(比較対象が前回の国勢調査の2005年)。もっとも日本に滞在する外国や国籍不明者を入れると0.2%の増加らしい(増加率は過去最低)。住民基本台帳ベース(日本人人口)では2006年からすでに減少に転じているとのこと。加えて高齢化率が23%になった(2005年は20.2%)が、2050年には40%近くになる予想とか(私も団塊の人間として寄与しているが)。日本でも江戸時代は日本人人口が3000万人程度だったが、それ以降急激に増え1億を超えたそうだ。しかし、2006年をピークに急激に人口は減り、100数十年後は、5000万人を切るとの予測も出ている。

日本では少子化・高齢化などの問題が論じられているが、世界的にみると、人口大幅増問題(毎年日本1国が誕生するペース)はより深刻な問題となりそうだ。とりわけエネルギー・食料・環境問題が重要である。三菱総研理事長の小宮山氏の著になる「日本再創造」によると、2050年が大きな転換点になると予想され「ビジョン2050」を策定されている。それによると、日本は過去の公害や、石油ショックなどの問題を解決してきた課題解決先進国であり、課題を解決する潜在能力があるため、今横たわる問題も他国に先駆けて解決できると発破をかける。

  • 自動車の台数が4倍(現状10億台が40億台)になっても、電気自動車や燃料電池車などの普及と、日本の燃費効率を活用すれば、現状より世界のエネルギー消費量は減らせる。
  • 鉄鋼、セメントなどの省エネ技術は、他国を凌いでいる。これを世界に普及させる。
  • 物質循環型社会の実現で、日本は「資源自給国家」になり得、資源の枯渇を抑止できる。

などの施策を提言されている。日本では「ものづくり」のエネルギー効率はかなりのレベルに達しており、今後はエネルギー消費の半分強を占める我々の「日々の暮らし」(輸送関係含む)に大きな省エネ可能性があると主張されている。エコキュート、エコファームは日本の世界に誇れる技術と宣伝され、実際「小宮山ハウス」にも導入され、他の施策と合わせてエネルギー消費量80%削減を達成されているそうだ。

日本独自の「もったいない」精神を大いに発揮し、「課題先進国」から、自信を持って「課題解決先進国」と言える国にしようではありませんか。

地域再生も市民が主役!

コミュニティデザイン手法を用いた地域再生への模索をテーマにした、NHK総合「クローズアップ現代」を見た(10月18日)。人と人との“つながり”を広げることで活力を生み出すという「コミュニティデザイン」、その第一人者の山崎亮さんは、これまで20の自治体を成功に導き、現在、全国から依頼が殺到している。ポイントは、住民自らに課題や魅力を発見させ、自分たちの手で解決法を考えさせることだという。

延岡市は、他の地方都市と同じく、駅前はシャッター街化、建物の20%が空き家となっている。この年に山崎さんが呼ばれ再生プロジェクトを始めた。市民100名以上が加わり、対策を練ったが、合言葉は「市としての誇り(Civil Pride)を取り戻せ!」。

山崎さんの成功例の紹介もあった。私の地元瀬戸内海の島「家島(姫路市)」の再生への取り組みである。昔は、山から土石を切り出し、関西国際空港などへの提供で活気があり、大金持ちもいたようだが、今は過疎化がどんどん進み、島の行末が懸念される状態にあった。「島としての誇り」を取り戻すために学生を派遣し、魚を食べさせたりしながら、島の誇りを島の住民に気付かせる活動をした。実際、活きのいい鯵など、魚や海苔は家島独特の味があり、学生たちもその味に舌鼓を打った。そして島の人たちは、誇りを取り戻し、NPO法人まで作って、町の活気を取り戻したそうだ。兵庫県三田市も人と人との絆を求めて、いろんな行事に多くの人が集まり活況を呈しているとか。

延岡市も、市民が議論を通して、市の誇りに気付き、空き家での市民のいろんな集まりの提案や、空き地でのコンサートなどなど、市民主体の提案が出て動き始めたそうだ。

今、国や多くの企業も大変な状況下にある。が、危機を脱するためには、国民自身が国の誇りに気付き、自らが強い思いを持って自主的に動くこと、社員が会社の誇りに気付き、自らその気になって会社の活性化に動くことが重要である。主人公は、一国の総理ではない、社長ではない、国民、社員そのものの意識と行動力がなければ変わらない。

延岡市も企業城下町で、市のことは企業と行政に任せきりだったため、不況に巻き込まれてもどうしようもない厭戦気分が漂っていたが、市民活動で蘇りつつある。番組から、大きな教訓を得た。