「組織・風土改革2016」カテゴリーアーカイブ

“最高の仕事ができる幸せな職場”とは!

最高の仕事ができる幸せな職場」というタイトルの本が目についた(ロン・フリードマン著、月沢李歌子訳、日経BP社、2015.11)。常々、会社と言うものは社員が付加価値源泉であり、社員が気持ちよく仕事が出来る職場つくりが経営者にとって重要な使命と思っている私にとって、手に取らざるを得ない題名だ。

従業員が幸せであれば、生産性や創造性に優れ、質の高い顧客サービスが提供できるということがある研究によって明らかになっていると言う。そしてそのような職場にするヒントが説明されている。その中で、ある種共感を覚えたり、興味を覚えた事項を列記する。

失敗を奨励する:このことは当ブログでも何度か書いているが、研究事例が面白い。病院での調査結果だ。「同僚と良い関係にある看護婦は失敗が少ないか?」とのテーマだ。常識的には「協調性の高い職場で有れば、看護婦はより仕事に集中でき、失敗も少ない」ということだが、結果は逆だった。なぜ?仲間との絆が強くなると失敗が増えるのではなく、失敗の報告が増えるのだ。失敗を報告した際に厳しく咎められれば誰も失敗を認めない。だが、失敗が学習の過程とみなされるなら失敗を隠す必要がない。失敗から多くを学べる風土を創り、他者の失敗からも多くを学べる協調性の高い職場つくりが大事という事。

遊びが問題解決を容易にする:難しい問題に取り組んだり、創造的な解決策を探ったりする時に頑張りすぎるのは良くない。先進的な会社では遊びの空間を設けているところもある。

モノより経験の方が価値がある:中国人の縛買いがモノ(商品)から、コトに移ったと報じられている。当書では、さまざまな商品やサービスと幸福感の研究に基づいて、「経験(旅行や気球に乗るなど)の提供は、同額の商品(テレビやスーツなど)の提供よりも人に対してより大きな幸福感を与える」ことが分かったと言う。モノは一人で使うことが多いが、経験は他者と関わることで視野が広がり、幸福感を増幅させる可能性が高く、企業でもモノより経験に予算を使った方がいいと説く。

小さな変化が、幸福感の維持に大きく影響する:人間は幸福な状態を維持するのが苦手。昇進も時間が経てばすぐあたりまえになってしまう。それを克服するには、楽しい喜びを、小さくても何度もあるようにする。月に一度の40ドルの花束よりも、毎週末に10ドルの花束を買って帰る方が幸福感を長引かせることが出来る。年末の一度のボーナスよりも年4回に分けて出す方が効果的と言う。

職場内コミュニティが形成される種をまく:重要な出来事(婚約、誕生日、昇進など)を皆で祝うような行事でグループの絆を強くすると、グループ員のストレスが減り、仕事の生産性も上がる。

効果的な称賛の方法:いいことをすればすぐ褒める(年に1回の表彰タイミングではなく)。人ではなく行為を褒める。公の場で褒める。

今朝の朝日新聞10面のコラム「経済気象台」に、「自分が働いている会社を信頼していると答えた日本人は4割で、主要28か国で最低」とあり、「日本経済の潜在力を上げるには、具体的な成長戦略に加えて、組織の改造も必要」と訴えている。上記のような考え方も参考にしながら「最高の仕事ができる幸せな職場」を目指してほしい。

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社員の人脈、業績にも影響?!(4月18日日経)

これまでも人脈つくりの重要性に関して、いろんな方の御意見も含めて紹介してきた。例えば、「人間とは、その人が今までの人生の中で会った、すべての人の総和である」(http://okinaka.jasipa.jp/archives/36)の言葉はけだし名言と思う。4月18日の日経朝刊の「エコノミクス・トレンド」の「社員の人脈、業績にも影響」とのタイトルでの京都大学若林直樹教授の記事に注目した。最初の出だしに

「ビジネスパーソンとして成功するには、良い人脈が大切とされる。社内での人脈が発展していることは、会社にとっても、職場でのコミュニケーションの活発化、まとまりの高さ、意思決定の速さ、ノウハウや情報の共有が進むとされる。」

とあった。

日本人社員は集団主義的なので人脈構築能力が多分高いと思われている。が、現実には国際的にみてそれほど高くないと言う。OECDの国際比較調査では、同僚との付き合いレベルで日本人は加盟国平均と同じで、韓国や米国より低いとされている。従って、企業の「見えざる資産」と位置付けられている「社内ネットワーク」を強化するためには、各企業において何らかの施策をうつ必要性を提言している。若林氏は、各国の研究成果を見ると、社員の社内ネットワークが、組織活動の高さ、知識移転とイノベーション(革新)、リーダーシップ開発への効果が論じられていると言う。JAL改革で稲盛氏がアメーバ経営を導入するに際し、仕事の上で同僚に対し「思いやりを持ち、誠実に」支援することの奨励策が改革を促進した。IT企業でのネットワーク活性策として挙げているのは、「IBM技術アカデミー」制度で国際的な技術討論の機会を与える施策や、日本サイボーズは、社員たちに対して「仕事Bar」という組織活性化策を実施し、複数部門の社員が会議室で食事をしながら仕事に関連した〝ゆるい話“をすることを支援している。いずれも、知識移転ネットワークの活性化策だ。

社内ネットワークが効果的に形成されると、組織の目標に向かって人と人の関係をうまくまとめる役割を持つ人が現れる。ネットワークを通じてリーダーシップを発揮する人だ。食品スーパー大手のライフコーポレーションは、店長に研修の一環として、パート従業員と積極的でポジティブなコミュニケーションをするよう訓練し、彼らのリーダー能力開発を進めている。

ただ、長期雇用の日本企業では管理職や経営者の社内ネットワークが長期にわたり、固定的で、しがらみを生みやすいこともあり、社内改革に対して大きな抵抗勢力になることもある。しかし、ますます環境変化の激しい時代を迎えて、自律的集団にするための社内ネットワークのあり方を検討し、企業の活性化につなげるための社内ネットワークの価値を見なおし、「見えざる資産」とするための施策を考えていくことも重要だと思う。

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都内有数の進学校都立小山台高校がなぜ強くなったのか(高校野球)

人間学を学ぶ月刊誌「致知」の「致知随想」記事は、信じられないような苦難を経ながら志を忘れず成功した人たちの物語が毎回綴られている。いつも真っ先に読んでいる。今回2016.4号に「大輔が残したメッセージ」と題して、東京都立小山台高校野球部監督福島正信氏が投稿している。2014年の春の選抜高校野球に21世紀枠だったが小山台高校が出場した時は私もびっくりした。新日鉄住金にも幹部など小山台高出身者が数多くいる。

「大輔」は、2006年当時2年生で唯一のレギュラーだったが、先輩と一緒に新しいバットを買いに行ったその帰りに、当時マスコミを賑わせた自宅マンションのシンドラー製エレベーター事故に巻き込まれ帰らぬ人になった。何事もコツコツと一生懸命取り組み、誰からも信頼される選手だった。当時は、小山台は都内有数の進学校で、練習スペースも時間も限られており、甲子園はおろか上位進出さえ難しいチームだった。あの時、大輔にバットを買いに行かせなかったら・・・、事故後監督も生徒も悔しくて悲しくて涙が溢れ、練習もままならなかった。その時、再び前を向いて一歩を踏み出す力を与えてくれたのが、大輔のお母さんだった。「皆さん、悲しい顔で練習をしていたら大輔が泣きます。だから笑顔で練習してくださいね」との手紙。そして大輔の野球日誌の「エブリデイ・マイ・ラスト」「1分1秒悔いのないように生きる。精一杯生きる」などの言葉に、全員「泣いてはいけない。大輔の為にも笑顔でプレーしよう、毎日を精一杯生き、絶対に甲子園に行こう」と、チームとしての絆が深まり、必死に練習に励むようになったそうだ。試合のたびに赤とんぼがベンチに飛び込んでくる話(大輔の変わり身)も織り込みながら、何事にも一所懸命取り組み決して手を抜かない、大輔が教えてくれた生き方が、小山台高野球部の伝統的精神として根づき、目に見える結果として表れるようになった。そして2009年と2012年の夏の東京大会で準々決勝まで進出。そんな中で、2014年1月春の選抜高校野球に21世紀枠として選ばれたとの報が飛び込んできた。結果は初戦敗退だったが、その悔しさを胸に、21世紀枠選出にふさわしい実力、≫品格を備えたチームになろうとあらためて誓い合うことが出来たと監督は言う。実際2015年夏の東京大会でも準々決勝まで進出している。

何よりもこの記事に驚いたのは、「人間、志を持つことによって、こうまで変わることが出来る」のかという事。リーダーの役割にも注目した。大輔のお母さんの言葉をきっかけとして掴み、大輔の遺した言葉をもとに、「何事もコツコツ努力する先に光がある」と選手たちの心の持ち様や、日常の基本姿勢の大切さを、以前にも増して強調するようになり、監督との信頼関係がより増幅し、世間も驚く成長を見せた。

同じ目標に向かって、みんなが一致してあるべき方向にやる気が集中すれば何でもできる」、このことを実現した小山台高校野球部のみんなは社会人になっても、目標に向かってあきらめず頑張れることと思う。小山台高校野球部頑張れ!

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