「組織・風土改革」カテゴリーアーカイブ

今日は「成人の日」、若い人たちの将来は?

今朝の日経朝刊に二つの話題が掲載されている。社会人となった新人の話と、3か月後に社会人となる内定者の話だ。

前者は、2面社説で「ソーシャル世代の生かし方」のタイトルで、「今年の元日を20歳で迎えた新成人は122万人、団塊世代が20歳だった1970年ころの半分だ」との書き出しで始まっている。人口減少時代に既に突入しているが、少子化問題は日本の将来に向けても大きな課題だ。その中で、昨年の日本生産性本部の新入社員調査結果の一部が紹介されている。「今の会社に一生勤めたい」人の割合が、入社直後の60%から秋には31%に減り、過去最大の下げ幅となったとのことだ。減り方が目立ち始めたのは4年前かららしい。「仕事を通じて叶えたい夢がある」人の割合も同じ傾向にあると言う。「失われた20年」という言葉があるが、今年成人した人たち含めて若い人たちはバブル時代の経験なく、高齢化社会(少子化社会)の中で、不安材料ばかりを抱え、自分で何とか未来を切り開かねばとの危機感を持ちながら入社したが、一向に夢が、あるいは夢の実現可能性が見えないことで、絶望しているのだろうか?由々しき問題だ。社説氏も言うように、対話を深め「後のキャリアにどうつながり、会社が社会でどう機能しているのか、きちんと説明する態勢を整え」て、彼らが入社時の夢・希望の実現に向けて頑張れる方向にもっていかないと、会社そのものも折角の戦力を無駄にすることになり、大きな問題となろう。新世代を理解する鍵の一つが「ソーシャル」と言う言葉で、ネット上のソーシャルメディアで人とつながるのは古い世代より得意で、社会問題をビジネスの手法で解決するソーシャルビジネスや、企業の社会貢献活動にも関心が高いと言い、「企業は自社の社会的使命をもう一度自問してみてほしい。そこから若者に語る言葉が生まれる」と社説氏は提言する

もう一つに記事は21面「マナー習得で好ダッシュ」と言う記事だ。「内定期間中に感じた不安は何ですか」とのアンケート調査(ガイアックスが実施)で、ビジネスマナーが34,4%でトップだったそうだ。それを受けての記事で、「名刺交換」「アポ取り」「ビジネスメール」の3点に絞ってビジネスマナーを専門家が説いている。たしかに、学生時代のマナーから最も変えなければならないマナーは、まずはこの3点に絞られるのかも知れない。ビジネスメールで言うと、件名に「会社名と自分の名前」を入れたり、「報告か連絡か相談か」も書いた方がいいと薦める。本文でも冒頭に「お世話になっております」、社内向けには「お疲れ様です」と添えることとある。気の置けない友人や、同僚などとのやり取りになれている学生時代のマナー、特にソーシャルメディアを通じたやり取りに慣れている人にとって大事な話とも言える。この記事も、我々にとっても大事な話だ。

アイデアが世界を変える ~TED 究極のプレゼン~

昨夜のNHK「クローズアップ現代」で上記のタイトルでの放送があった。企業を興し、成功経験から始まり、その後地獄を経験したクリスアンダーソン氏が管理人となって、始めた話です。番組「クローズアップ現代」のTEDに関する紹介分を下記します。

聴衆の前に立ち、ビジネスや研究活動を通して得た“広める価値のあるアイデア”を18分以内で語るプレゼンイベント「TED」が世界的な人気を集めている。ビル・クリントン、ビル・ゲイツ、サンデル教授、ジェームズ・キャメロン監督… 名だたる著名人など8000人が参加。動画はネットで全世界に広がり、1千万回視聴されたものもある。5月末には日本で初めてのオーディションが行われ、ビジネスマン、科学者、建築家などが参加し、世界を目指した。一方、TEDの広がりをきっかけに日本でもアイデアを人に伝えることの重要性が改めて見直されている。TEDを参考に、プレゼンテーションのあり方を根本から見直す企業が登場。また、TEDから得たアイデアで、人生が大きく変わった人々もいる。世界を席巻するプレゼンの魅力と共に、“伝える力”を見直す人々の姿に迫る。

いろんな分野のアイデアを共有する、広める価値のあるアイデア(Ideas worth Spreading)を共有化する。テーマ選択は、真実・好奇心・多様性を重視し、商売・企業のたわごとは禁止、政治的な話もダメ。いろんな分野のアイデアがつながりあって、よりよい考えにたどりつく。日本でもベンチャーを起こした若者が、TEDの話を聞き、それをヒントに商品開発し、苦境を脱した事例も紹介されていた。テーマもさることながら、人びとを魅了するプレゼン手法にヒントを得た、日本のIT企業の女性がそのヒントを活かし、お客様を引き込むことに成功した事例も。それまでのプレゼン資料は、商品のことを事細かに説明するものだったが、お客様の興味を引くために余分なことは省き、お客さまの気を引くシンプルな資料にしたら、引き合いが急に増えたそうだ。

生臭い話が飛び交う現実の中で、前向きな好奇心を刺激するアイデアが個人の間で飛び交い、世界を変える。各国語に変換され多数の国で閲覧されているそうだが、日本でもTED会議が全国各地で開催されている(6月30日には渋谷ヒカリエで開催)。下記URLで日本語字幕のTEDプレゼンを見ることが出来る。http://www.ted.com/translate/languages/ja

また、NHKのEテレでも、4月から毎月曜日23時~23時25分にTEDプレゼンを題材にした英語教育を兼ねた番組をやっている(スーパープレゼンテーション)。昨日初めて見たが、MITメディアラボ所長の伊藤氏(ブログでも紹介済み:http://jasipa.jp/blog-entry/7323)が番組ナビゲータをしておられ、昨夜はアダム・オストロウ「死後のデジタルライフ」のプレゼンが紹介されていた。その内容を番組紹介文から下記しておく。

膨大なブログやツイートが残されていくデジタルアーカイブ。自分の死後、それらの情報をどう整理・管理するのかをめぐり、新しいサービスが登場し始めた。技術の進歩によって人生すべてのデータを解析し、死後も自動的に情報発信することも可能に。ネット上の自分の「死」をどう定義づけるのか、今後議論を深めていく必要がある。

新しいものを生み出す究極のコミュニケーションに発展する可能性もある。今後も注目していきたい。

「全員経営」のすすめ

PHP Business Review「松下幸之助塾7・8月号が昨日届いた。5.6月号に関してはその一部を5月3日(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2012/5/3)、5月5日(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2012/5/5)に紹介した。今回の特集は「全員経営の凄み」。そのリード文を紹介しておく。

「‘全員経営’――この言葉が近年マスコミ上に頻出し、多くの企業の課題として問われている。その背景には、‘全員経営’ではない経営、すなわちトップの経営判断だけに頼る経営ではこのグローバル化の時代、スピードに劣り、とても乗り切れないからという危機感がうかがえる。そしてまたそれは一人ひとりのビジネスパーソンの尊厳を考える上でも、必然となってきたようだ。社員全員が目標を共有しつつ、経営者感覚を持ち、機能すれば、いったいどれだけ高度な経営ができるのであろう。一流経営者たちが求める‘全員経営’のための哲学と方法を探る。」

成功事例として「ヤマダ電機」やブラジルのコングロマリット「セムコ社」が紹介され、大手外資系(シェル石油、ジョンソン&ジョンソン、フィリップスなど)のトップを歴任された経営のプロフェッショナル新将命(あたらしまさみ)氏が「全員経営を根づかせるために必要な仕組みつくりとは」を提言されている。新将命氏は「経営の教科書」などの本も出版されており、私もこの本を読んで同氏に興味を持ち、講演会でお話を伺ったが、経験に裏付けされて経営論に感銘を受けた。新氏の今回の提言の一部を下記に紹介する。

ワンマン経営では、ワンマンの能力以上の成長、発展は望めない。あるレベルまで大きくなった会社がそれ以上伸びない原因は、そのトップにある。その壁を突破するためには、社員の衆知を集めた全員経営が必要。その全員経営を実行するためのポイントは

  • ① 方向性
  • ② 関与
  • ③ フィードバック

この3つのキーワードを会社の中にしっかりと根づかせることと言う。筆者はいろんな会社から企業研修を依頼され、毎週のように幹部や部課長クラスの研修を実施されている。その中で頻繁に出てくる言葉が「疲労感」「疲弊感」そして「閉塞感」だそうだ。目先の売上高や利益の確保、新規顧客の開拓などで、朝から晩まで鞭を振り回され、部課長はそれに応えんと遮二無二働いている。部課長にこの3つを感じたことがあるかと聞くと、「強くまたはある程度感じる」と答えたのが90%で、「全く感じない」は0%だったそうだ。

これを解決するためには、「方向性=理念+目標+戦略」を社員の納得性の元に作ることがまず重要と言える。トンネルの先に光が見えれば、今の疲れは我慢でき、頑張れる。部課に目標を与えるとき、一方的に与えるのではなく、目標設定に部下も参画させ、納得性のあるものにする。会社の理念や戦略を作る過程においても参加させることも意味がある。これが2番目のキーワード「関与」である。目標が決まれば、その結果が出たときに、きちんとフィードバックすること。目標の立てっぱなしは逆効果で、部下に対する無関心を表わし、部下のモチベーションを下げてしまう。この3つが、きちんと定着すれば、社員のやる気に火をつけられる可能性が大きくなり、経営に対する関心も惹起し、当事者意識も湧き上がる。「関与」によって部下のやる気は3倍になると筆者は言う。このような風土が出来れば、「自責の企業文化」(何か問題が起こった時、他者に責任を求めず、自分の責任で考える)の定着も可能となる。

松下電器は松下幸之助氏の「全員経営」の発想で大きくなった。新氏は、グローバル企業のトップを数社経験してきた中で、「全員経営」は、企業経営の普遍的な要諦であると言う。より大きく成長するためにも、「全員経営」は一考の価値あると思うがいかが・・・。