古い記事(2018.1.15日経朝刊)で恐縮ですが、「人生100年伸ばせ”性格力“」とのタイトルで慶応大学教授鶴光太郎氏の記事が掲載されていた。「人生100年時代」ますます高齢化が進むと同時に、AIが仕事を奪うことが危惧されている。そのような中で、最近の研究では、学力や偏差値のような「頭の良さ」(認知スキル)でなく、テストでは測れない「非認知スキル」が人生の成功に影響することが分かってきたという。AIに代替されない普遍的な能力やスキルとは?その鍵となるのが「性格スキル」。「性格スキル」とは、「開放性(好奇心や審美眼)」、「真面目さ(目標と規律をもって粘り強くやりぬく資質)」、「外向性(社交性や積極性)」、「協調性(思いやりや優しさ)」、「精神的安定性(不安や衝動が少ない資質)」で、心理学ではこの5つが組み合わさって性格が形成されていると言われているそうだ。この5つの性格スキルと業績評価などのパフォーマンスとの関係が日本をはじめ多くの国で研究されている。
研究結果では、業績評価との相関関係が大きいのは「真面目さ」で、「外向性」、「精神的安定性」が続く。またこの関係は学歴とはあまり関係がなく、どんな学歴でも性格スキルが高まれば賃金も増えるとの結果も出ている。面白いのは「協調性」。日本と米国では全く逆の関係が出ているという。米国では協調性と年間所得の関係が負の相関だが、逆に日本では正の相関らしい。個人主義と集団主義の違いを反映している?
職業人生に大きな影響を与える「性格スキル」はいつ伸ばすべきか?幼児期の教育が大事なことは知られているが、大人になってからも、そして年をとってからも伸ばしていけるという。添付の図を見てほしい。イリノイ大学のロバーツ教授の研究成果として5つの性格スキルが年を取るにつれどう変化するかを表している。これを見ると5つの性格スキルのなかでも人生の成功で特に重要な役割を占める「真面目さ」「精神的安定性」「協調性」については10代の伸びよりもむしろ、20代、30代の伸びが大きいことが注目される。
大人になっても十分性格スキルを鍛え伸ばすことが可能なエビデンスだと鶴氏は言う。人生100年時代、性格スキルを伸ばせばどんな道に進もうと人生が開けてくる。
「人づくり革命」で“リカレント教育”(生涯にわたって教育と就労を交互に行うことを進める教育システム)が需要な政策課題となっている。企業教育も含めて大学教育やリカレント教育にもこの視点を入れていくことが求められていると記事は締める。
私は、私の経験に基づいて「自分の性格は変えられる」と言っている。人前で話すことなどとてもできる子ではないと思われていた小学校時代。中学時代に先生に誘われて断り切れずしぶしぶ入部した弁論部のお陰で人前でしゃべるのが全く苦痛ではなくなった。弁論大会では親戚が半信半疑で聞きに来て驚いたとの話もある。今の自分があるのも、この時の性格スキルの変化のお陰と、恩師には感謝、感謝だ。性格を変えるには、まず自分を知ること。そして自分の弱点を知り、それを克服するための場を探し、そこに飛び込んでいくこと。この勇気で性格スキルを変え、人生100年時代を幸せに送ってほしい。