「生き方」カテゴリーアーカイブ

中年の孤独にどう向き合うか?

3か月ほどブログが中断してしまいました。この間、新規投稿が出来なくなり、やっと回復手段が分かり、4月予定していたブログを投稿します。心配していただいた方には申し訳ございませんでした。

4月5日の朝日新聞夕刊3面のタイトルに目が止まった。4月と言えば新入社員が躍動する時期に、中年の悩みの話?と一瞬驚いたが、リード文を見て、興味を覚えた。

出会いと別れの春、新しい人間関係が始まる。40~50代の働く中年世代は、この季節に何を思うのだろう。会社の安定なんて今や昔。人生の半分が過ぎた今、「例えようのない不安」「中年の孤独」にどう向かい合えばいいのか。会社員を辞め、永平寺で修業し、日本三大霊場の一つの青森・恐山菩提寺の院代(住職代理)を務める禅僧、南直哉(じきさい)さんに聞いた。

~なぜ不安を感じたり、孤独感にさいなまれたりするのか?~

あなたが誰であるかを決めるのは他者です。目的も意味も価値もわからず生まれてきただけのあなたは、かけがえのない命と他者が言ってくれたから大切なんだと思う。自己を愛せるのは自分を肯定してくれる他者がいるからです。

人は皆、他者を欲します。孤独は物理的に一人でいることではなく、人間関係から生まれます。他人に分かってほしい、話を聞いてほしいという気持ちがないと孤独にはなれません。だから、自分の気持ちが理解されなかったり、言いたくても言えないと感じたりすると孤独を感じます。わかってもらいたくても、何に悩んでいるか言語化できない人が多いように思います。

~なぜ、気持ちを語れないのでしょうか?~

家庭も友人も社会もビジネス化し、弱肉強食の市場原理の価値観が社会を覆っていることが背景にあります。何かと自己決定、自己責任が言われ、市場の論理があたかも生き方の基本のように錯覚されています。

あなたが誰であるかを決めるのは他者だ”、言い換えれば“自分の存在価値は他者がいるから分かる”この言葉に納得感を覚えた。南住職代理は、「孤独と思っている時は自分を閉じている時です。自分を開くことが大事です。その気持ちを受け止めてくれる人間関係を習慣的に築いておくこと。身の回りを覆っている常識がすべてと思わず、意識的に見方を変えるだけで楽になれます」と記事を締めている。

「自分はこんなに努力しているのに、なんで評価されないのか?」と愚痴を言う人がいる。昔、上司に言われた言葉が「サルでも食べるためには努力する」と言われたことを思い出す。何か目標を持って努力し、そしてそれが他者にも理解できることであれば、その努力を評価してくれる。あくまで自分の存在感は、他者が認めてくれることで生まれてくる。まさにWBCベースボールで、栗山監督が不調の村上を信じて使い、結果的に優勝に大いに貢献したことを思い出す。これこそ優勝を目標に意識を高く持ち、自分を信じ努力する姿を見ている栗山監督の村上に対する評価、信頼感であり、それを感じた村上の本来の力の発揮を生んだ。

稲盛氏など有名なリーダーは、厳しい指導の中にも、部下の気持ちを察したリーダーシップを見事に発揮され、そのために社員との対話を重視し、個々の力を存分に発揮させた方々だ。リーダーと各個人とのの信頼関係を如何に築くか、個人としても目標を持って頑張る姿を見せ、積極的に上司と対話の機会を持つことが自分を開くことにつながると思う。

中年の方ばかりではなく、今年入社の新人にも頑張ってほしい。

<参考>他者との関係性作りに関して「ブレッドが教えてくれた仕事でいちばん大切なこと」(ソフトバンクパブリッシング出版、2005.3)が面白い。帯封には「郵便の配達員というお世辞にも華やかとは言えない職業に従事するフレッドという名の男が、ひときわ優れた熱意あふれる顧客サービスを提供できるのだとしたら、私やあなたの周囲にも、他人のために尽くす機会がいくらでも見つかるに違いない。」とある。昇進や昇給を目指すのではなく、他者との関係性を良くするだけで自分自身の心が豊かになるヒントが書かれている。

聖路加国際病院日野原先生のお人柄を偲ぶ!

2017年に惜しまれながら105歳の天寿を全うされた聖路加国際病院の元院長日野原重明氏。亡くなられる直前に日野原氏のたっての願いで、骨折してベッドに横たわれる状態の時も含めてのインタビュー内容が2020年に出版された。題名は「生きていくあなたへ~105歳どうしても遺したい言葉~」(2020.4刊、幻冬舎)。102歳の時、「長い人生の中で歌を聴いて神様を感じたのは初めて」と日野原氏に言わせた韓国のテノール歌手ベー・チュチョルのプロデューサー輪嶋東太郎氏がインタビュー形式で日野原氏の言葉を紡いだ本だ。ちなみに、この出会いの後「日野原重明プロデュース ベー・チェチョルコンサートを全国で10回開かれたそうだ(you tubeで日野原氏指揮のもと日野原氏作詞作曲の「愛のうた」を歌うベー・チェチョルが見られます)。今回の対談も、「愛する人々に言葉を残したい」との強い思いで、他の仕事をすべてキャンセルされている状態の中で輪嶋氏に頼んで実現できたそうだ。

この本では輪嶋氏が問いかけることに対し日野原氏が答える形で進めている。「人目ばかりが気になります。自然に自分らしく生きていく秘訣はありますか?」、「愛することと愛されること、先生はどちらを重視しますか?」、「家族や恋人、大事な人にきつい口調になってしまったり、素直に感情表現ができません。」、「人間は孤独な存在なのでしょうか?」、「そもそも愛って何ですか?」、「自分のことを嫌いだという人とどうすればうまく付き合えますか?」など36個の問いに日野原先生は自らの信条に基づいて丁寧に答えられている。

最後の質問「先生の次の目標は何ですか?」の問いに対しては、人間の生きる目的は”愛“だと言い切り、そのために、残り少ない時間を精一杯使って、人のために捧げること。そしてその過程で、未知なる自分と向き合い、自己発見をすること。それを最期のその時まで絶え間なく続けていくこと。そのためには、これからも何度も何度も苦難にあうでしょう。でもその苦しみが大きければ大きいほど、きっと自分には大きな自己発見がある。それを超えて自分の時間を人々に捧げる。その喜びは苦難と比例して大きなものであると信じ、ただただ、ありのままに、あるがままに、キープオンゴーイングだ。

延命措置を断り自宅療養されている人の言葉とは思えません。実際、そのあと元気を取り戻された時期もあったそうですが、インタビュー後5か月半で旅立たれた。

詳しくは述べませんが、長い人生を生きぬくための考え方が学べ、元気をもらえる書だと思います。

最期に、先生作詞・作曲の「愛のうた」全文を記しておく。これは先生が90歳を過ぎたころ、ホスピスで毎日のように天に召されていく人達を前にボタンティアをしていたコーラスの方々のために作られた曲だそうです。

「愛の歌」

我ら いまここに 心を合わせ 善き業(わざ)のために この時を過ごさん

愛の手を求める その声に応えて いとしみの心 人々に送らん

我ら いまここに 力を合わせ 報いを望まで 奉仕にぞ生きなん

捧げる喜び 心こそ溢るる

愛するあなたに 愛をば送らん 愛をば送らん

大谷翔平は宇宙人?

昨年末にかけて、大谷翔平の活躍に関するテレビ、新聞の報道が目白押しだった。大晦日の朝7時20分から9時までのNHK総合“大谷翔平の4年の軌跡”の番組に見入った。やはり並みの人間ではない。大谷の通訳の水原氏に、大谷を評して「普通の人間ではない。宇宙人?」と言わせるほどだ。それにしても2018年から2021年、手術を2回受け、成績も期待が大きすぎたせいもあるが、芳しくない中でなぜ、2021年あんなにすごいことをやってのけたのか?その理由が、当番組で分かったような気がした。

2018年最初の年のオープン戦では、全く成績が上がらない。イチローに声をかけ、アドバイスももらった。「自分の才能を、やってきたことを、ポテンシャルを信じろ!」と。これで目覚め、初戦で初勝利、そしてホーム初戦から3試合連続ホームラン。しかし、6月に右ひじ靭帯故障、1か月後に打者として復帰するも、さらに進化を求めて手術を決断。手術後は、強い意思をもって、コーチの教えに従って腕に負荷のかからない投球にチャレンジするなどトレーニングに専念。

2019年は1か月遅れでチームに合流し、打者に専念し6月の打率が3割4分、さらに日本人初のサイクルヒット達成。順風満帆の年に見えたが、左ひざ故障でまたもや手術を決断。この年は打率0.286、ホームラン18本で決して悪い成績ではなかった。

2020年はコロナ禍で、60試合という異例のシーズンとなった。手術後のぶっつけ本番もあって、過去最悪の打率0.190、ホームラン7本だった。マスコミもこの成績で二刀流に懐疑的な見方が多かった。2021年に向けて、並々ならぬ決意をこめて、フォームを科学的に解析し、重さの違うボールを壁にぶつけながら投球フォームの確認をしたり、バットの振り方を変えたり(水平に近い振り方から弧を描く振り方へ)、いろんな努力を欠かさなかった。これも結果が出なければ辞めざるを得ない職業であり、結果を出すしかない、そのためのラストチャンスと捉え、決意を新たに新シーズンに臨んだ。その結果が、MVPはじめ多くの賞を総なめする成績を上げる結果となった。

エンジェルスのマドン監督が、世間の二刀流に対する懐疑論に対して、大谷の野球に対する考え方、行動を見て、「心から二刀流を楽しみ、野球を楽しむ大谷のような人はいない。大谷には制限を設けない」との判断で2021年大谷自身二刀流を1年担当して全う出来た。同僚のトラウトも、「投手と打者を同じ日にやり、ホームランを打つ大谷を信じられず、所作に魅入ってしまう」と驚く。

投手では、得意のスプリットに加えてカットボールも得意技とし、四球も激減、捕手も日々成長していく大谷に驚く。2021年のオールスターでは、MLB初の二刀流で登場。二刀流に懐疑的だった記者も、一転「野球の常識を超え、ベーブルースを超えた、メジャーでダントツの人気プレーヤー、まさに希望の光」と絶賛した。

苦難を乗り越え、短期間にトッププレーヤーになぜなれたのか?

小さい頃から大谷を指導していたお父さんも驚く成長ぶりだ。中学時代は、投手としてコントロールもなく、打者にぶつけないように周囲が心配し、打者としても打てない。しかし、父は「意識をもって、自分が生長するために、ともかく一生懸命走る、投げる、打つ、そしてプレーの内容より取り組む姿勢」を徹底的に指導してきたそうだ。父曰く、「ここまでやってくれるとは思わなかった、というより今の姿は信じられないが、忠実教えを守ってくれているのが嬉しい」と。

大谷は、他球団の選手の評判も良いが、バットを折った選手に、折れたバット渡すシーンが示すように、人間的にもすばらしいとの評価がアメリカでも人気の大きな要因となっている。しかも、”すべての苦難も生長の機会”と捉え、”反省する時間が好き””困難に挑戦できることが好き””やることがたくさんあることが好き”と言う。どんな苦境にあっても、未来の成長を期して努力する、人の話を聞く素直さなど、まさにポジティブ思考の実践者として今がある。今年のシーズンをどう過ごすかと聞かれ、「2021年の成績を最低とし、来年以降頑張るための基準とする」と言い切る。すごい人間だ。

大谷選手を宇宙人と見るのではなく、人間としてみると、人としての成功のヒントがいろいろ見えてくるのではないだろうか。失敗してもくよくよするのではなく、成長のための失敗と考え、意志強く、目標に向かっての努力につなげる。そしてその努力を楽しむ。要はものの考え方と行動力だ。苦境があるからこそ、成長できることを大谷選手は実証してくれている。