「経営改革」カテゴリーアーカイブ

日ハム、ロッテ球団をこうして蘇らせた!

致知8月号に「こうして組織を蘇らせた」とのテーマで、セレッソ大阪に続いて、日本ハムを蘇らせた藤井純一氏と、ダイエーホークス、千葉ロッテを蘇らせた瀬戸山隆三氏の対談記事がある。両者共に、不人気で赤字のチームや球団を立て直した方だ。

日ハム出身で、サッカー、野球共に素人の藤井氏はガンバ大阪に比して、地元でも不人気のセレッソ大阪(前身はヤンマーだが日ハムも出資したいた)で、当時は赤字が数十億という状況だったのを見事に立て直した。東京ドームが本拠地だった日ハムは、ジャイアンツがメインで、観客の数は一人ひとり勘定できると言う位、球場もガラガラ。札幌に移ったが北海道もジャイアンツファンだらけ。こちらも毎年40億円の赤字状態。一方ダイエー出身の瀬戸山氏の方は、南海を買ったダイエーは、本拠地を福岡に移したが、もともとここは西武の本拠地で、ダイエーはよそ者扱い。ホークスを元気にした後、千葉ロッテから声がかかったが、こちらもやはり40億円の赤字状態。いずれにも共通するのは、球団会社の赤字は、親が肩代わりしてくれるため、社員の危機意識は薄い状態。

両氏がまずやったのは、社員の意識改革。そのために、社員に共通のビジョンを持たせることから始める。このチームや球団をどの方向に持っていこうとしているのか、我々はこうなりたいんだとの思いを皆で考え、共有しようと。そして、その後の行動の基本は、山本五十六の語録「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ」。瀬戸山さんが千葉県の各市町村を回った時、異口同音に「ロッテ球団の方が来られたのは初めて」と。自ら動き、社員も動き始めると、監督、選手も歩調を合わせて協力姿勢になってくれる。ホークスでは根本監督、王監督、日ハムではヒルマン監督、ロッテはバレンタイン監督が、球団のビジョン達成に向けて協力体制をとってくれたとか。藤井氏は、ファンを向いて仕事をすることを基本とし、チケット販売方法でも「730チケット(7時30分以降は半額)」、「婚活チケット」や「おやじナイト」など若い社員が進んでいろんなアイディアを出してくれる。瀬戸山氏も「社員は改革の同志」との考え方で、率先垂範し、6年で売り上げを4倍にしたそうだ。

当ブログでも、企業理念の必要性、社員との共有を言っているが、藤井氏と瀬戸山氏は、まさにそのことで社員の心をつかみ、意識改革を行い、逆境の中で飛躍的な成長を果たされた。その経験を買われ、藤井氏は近畿大学経営学部教授、瀬戸山氏は千葉商科大学大学院経済学研究科客員教授をされている。

「全員経営」のすすめ

PHP Business Review「松下幸之助塾7・8月号が昨日届いた。5.6月号に関してはその一部を5月3日(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2012/5/3)、5月5日(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2012/5/5)に紹介した。今回の特集は「全員経営の凄み」。そのリード文を紹介しておく。

「‘全員経営’――この言葉が近年マスコミ上に頻出し、多くの企業の課題として問われている。その背景には、‘全員経営’ではない経営、すなわちトップの経営判断だけに頼る経営ではこのグローバル化の時代、スピードに劣り、とても乗り切れないからという危機感がうかがえる。そしてまたそれは一人ひとりのビジネスパーソンの尊厳を考える上でも、必然となってきたようだ。社員全員が目標を共有しつつ、経営者感覚を持ち、機能すれば、いったいどれだけ高度な経営ができるのであろう。一流経営者たちが求める‘全員経営’のための哲学と方法を探る。」

成功事例として「ヤマダ電機」やブラジルのコングロマリット「セムコ社」が紹介され、大手外資系(シェル石油、ジョンソン&ジョンソン、フィリップスなど)のトップを歴任された経営のプロフェッショナル新将命(あたらしまさみ)氏が「全員経営を根づかせるために必要な仕組みつくりとは」を提言されている。新将命氏は「経営の教科書」などの本も出版されており、私もこの本を読んで同氏に興味を持ち、講演会でお話を伺ったが、経験に裏付けされて経営論に感銘を受けた。新氏の今回の提言の一部を下記に紹介する。

ワンマン経営では、ワンマンの能力以上の成長、発展は望めない。あるレベルまで大きくなった会社がそれ以上伸びない原因は、そのトップにある。その壁を突破するためには、社員の衆知を集めた全員経営が必要。その全員経営を実行するためのポイントは

  • ① 方向性
  • ② 関与
  • ③ フィードバック

この3つのキーワードを会社の中にしっかりと根づかせることと言う。筆者はいろんな会社から企業研修を依頼され、毎週のように幹部や部課長クラスの研修を実施されている。その中で頻繁に出てくる言葉が「疲労感」「疲弊感」そして「閉塞感」だそうだ。目先の売上高や利益の確保、新規顧客の開拓などで、朝から晩まで鞭を振り回され、部課長はそれに応えんと遮二無二働いている。部課長にこの3つを感じたことがあるかと聞くと、「強くまたはある程度感じる」と答えたのが90%で、「全く感じない」は0%だったそうだ。

これを解決するためには、「方向性=理念+目標+戦略」を社員の納得性の元に作ることがまず重要と言える。トンネルの先に光が見えれば、今の疲れは我慢でき、頑張れる。部課に目標を与えるとき、一方的に与えるのではなく、目標設定に部下も参画させ、納得性のあるものにする。会社の理念や戦略を作る過程においても参加させることも意味がある。これが2番目のキーワード「関与」である。目標が決まれば、その結果が出たときに、きちんとフィードバックすること。目標の立てっぱなしは逆効果で、部下に対する無関心を表わし、部下のモチベーションを下げてしまう。この3つが、きちんと定着すれば、社員のやる気に火をつけられる可能性が大きくなり、経営に対する関心も惹起し、当事者意識も湧き上がる。「関与」によって部下のやる気は3倍になると筆者は言う。このような風土が出来れば、「自責の企業文化」(何か問題が起こった時、他者に責任を求めず、自分の責任で考える)の定着も可能となる。

松下電器は松下幸之助氏の「全員経営」の発想で大きくなった。新氏は、グローバル企業のトップを数社経験してきた中で、「全員経営」は、企業経営の普遍的な要諦であると言う。より大きく成長するためにも、「全員経営」は一考の価値あると思うがいかが・・・。

小が大を超える!(JASIPA会員企業に期待)

6月5日の当ブログで、「クラウド時代は中小ベンダーの出番」という意味の記事を掲載すると同時に、日経記事の「日本IBMに独から来たリストラ社長」で日本IBMの厳しさを紹介した(http://jasipa.jp/blog-entry/7602)。

最近出版された「小が大を超えるマーケティングの法則(岩崎邦彦著、日本経済新聞社)」では、高度成長時代は「大きいことはいいことだ」だったが、今は「規模の大きさは強さを意味しない」と言う。ITベンダーに特化している話ではなく、衣料・食品販売企業と考えれば良くわかるが、「個性」、「専門性」、「こだわり」などが小さな企業の強みになるとの事。そして、小さな企業は、次の3つの力を高める必要性を説く。

  • 1)本物力:シンボルとなる商品を軸にして、個性やこだわり、専門性を発信し、本物志向に応える。
  • 2)きずな力:顧客との関係を深化させ、顧客一人一人との「きずな」を強化していく。それにはまず、現在の顧客の満足度を高める必要がある。
  • 3)コミュニケーション力:顧客に対するきめ細かなアドバイスや提案を行うなど、顧客との「人的コミュニケーション」を強化する。

JASIPAは、比較的小さなITベンダーの集まりであるが、今こそ「好機到来」と考え打って出るチャンスかも知れない。経済が成熟化し、需要も多様化、人口減少、環境問題など先が読めない時代が今後も続くと思われる。そのような時代に、社長の方針が瞬時に社内に徹底でき、小回りの利く「中小ベンダーの強みを強みとする経営」が、社会からも求められているのではないだろうか。上記「きずな力」や「コミュニケーション力」など、社長が先頭に立って規範を示し、それを社員が見て自らの行動に反映すると言う形も、大きなベンダーでは不可能である(顧客数、プロジェクト数を考えても不可能)。小さいが故に、社長一人の姿勢・行動が、大きな強みになり、社員をモチベートし、顧客との一体感を醸成することにつながりやすい。逆に言えば、社長次第で会社の帰趨が決まるとも言える(大企業では、多少社長の出来が悪くても優秀な人材がカバーできる)。

この4月から若手経営者との経営に関する懇談会を始めている(第1回:http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2012/4/27、第2回:http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2012/5/25)。7月から正式に「JASIPA経営サロン」と称して、会員企業の方がたから参加希望者を募ることにしている(原則第4木曜日夜)。経営者同志の経営に関するフランクな意見交換を通じて、中小ベンダーの強みを未来に向けて強化してほしい。JASIPA会員の積極的参加を期待している。