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LCCの雄 サウスウェスト航空

アメリカで、最優良航空会社、世界最強LCC(格安航空)として知られるサウスウェスト航空をご存知ですか?1971年にボーイング737 3機のみで、短距離路線に特化して運行開始した。1967年に設立した際は、他社の妨害で裁判の連続だったが、1973年以降、湾岸戦争、リーマンショックをも乗り越え黒字を継続しており、他社を凌ぐ利益率を誇っている。

どんなに事業が順調でも決して国際便などに手を出さず、「短距離直行便を頻繁に利用する州内旅行客に、良質で低価格のサービスを提供すること」の方針を徹底して遂行している。例えば、ダラス~サンアートニ間で他社のエコノミークラス62ドルに対してサウス社はたったの15ドルだった。有る株主が「2~3ドルあげてはどうか」と尋ねたところ、「我が社の競争相手は、地上の輸送手段だ」と応えたとか。

人件費以外の徹底したコスト削減を実施している。例えば、機種はボーイング737に統一し(現在は100%ではないが)、パイロット、整備士の効率アップを図り、機内食を廃止し、機内の調理設備スペースは客席にする。到着後、出発までの準備時間は他社の半分。地上要員が、FIレースのピットイン時さながらにすばやく働く。パイロットも客室乗務員も手伝う。皆が定刻通りに飛行機を飛ばすために一致団結している。ちなみに席指定はなく、搭乗券も紙ではなく再利用可能なプラスチック。

結果として、定時運行率、手荷物紛失件数の少なさ、利用者からの苦情の少なさの3点で常にトップの評価を継続している。

採用方針も面白い。パイロットも同じだが、「ユーモアセンスのある人」を採用のポイントとしている。ユーモアにある人は、変化にも素早く対応出来るし、プレッシャーの中でも面白い事を考える(資質は生まれつき、能力は開発できると発想)。明るい職場で仕事を楽しむ雰囲気を創ることで、生産性も、創造力も、適応力もUPする。

「社員第一、顧客第二」の方針を徹底する。客室乗務員の服装もキュロットスカート、ブーツなど自由とか。お客から「客室乗務員はふざけすぎ」とのクレームがくることも多いが、「方針は変えたくないので、お気に召さなければどうぞ他社をご利用ください」と返事を出すらしい。

日本でもANA,JALがLCCに参画を表明している。アメリカでは、国内線の旅客数ではユナイテッド航空、アメリカン航空を抑えて世界ナンバーワンとか。ANAもJALもよほど戦略を明確にしないと、特に国内線では激しい競争となり、相乗効果どころか、共倒れの可能性もあるのではなかろうか。(大部分は「破天荒!サウスウェスト航空―驚異の経営」〔日経BP社、1997.7出版〕より引用)