「組織・風土改革2014」カテゴリーアーカイブ

世界のエリートの「失敗力」とは?

「一流のグローバル組織では、失敗した人が高く評価される。手痛い失敗を経験して、はじめて世界のエリートになれる。この意外な事実を知ったのは、今から15年前アメリカの経営大学院(コロンビア大学)を受験した時だ。」から始まる佐藤智恵氏(NHK→留学→BCG→コンサルタントとして独立)の出版本(2014.2.3PHPビジネス新書)「世界のエリートの失敗力―彼らが(最悪の経験)から得たものとはー」。

筆者が言うには、ハーバード大学などの経営大学院を受験する際には、TOEFL,GMATといったテストの点数などと共に受験生の人格を見るための課題エッセイが課されるとの事だ。テーマは各校さまざまだが、「将来の目標」「仕事で達成したこと」などと並んでよく出題されるのが「失敗体験」だそうだ。筆者はコロンビア大学経営大学院の面接官もやられたそうだが、その際分かったことは、失敗を語る時にその人の人格がより分かるとのこと。人は成功を語る時は自信たっぷりになるが、失敗を語る時は謙虚になる。恥ずかしい体験や辛かった体験を語る時人格そのものが滲み出る。これらの経営大学院では、世界で通用するグローバルリーダーを如何に育てるかを最大の目標にしている。世界を舞台に活躍するためには、文化・風土の違いもあり失敗を恐れていてはリーダーは務まらない。経営大学院では、多くの著名な経営者や政治家を講演に招くが、彼らは実に多くの失敗談を赤裸々に話してくれると言う。そして、彼らの失敗談をテーマにディベートさせ、失敗から何を学ぶか徹底的に意見をぶつからせる。場合によっては1対多数の意見対立の中で挫折経験も味わわせる。グローバルリーダーになるためには「失敗こそ財産」「失敗こそ成功の母」と失敗を肯定的にとらえる価値観を植え付け、失敗を恐れて挑戦しない価値観を払拭させることに注力している。

ハーバードビジネススクールのミッションは

世界に変化をもたらすリーダーを教育すること

出身者は、ジョージ・W・ブッシュ元大統領、ニューヨークのマイケル・ブルームバーグ前市長、GEのジェフリー・イメルトCEO、楽天の三木谷社長、ローソンの新浪前社長、DeNAの創業者南場智子氏など多士済々で、なるほど世界に変化をもたらしている人達だ。

スタンフォード大学経営大学院のミッションは

人々の生活を変え、組織を変え、世界を変える人材を育成すること

出身者は、ナイキやサンマイクロシステムズ、エレクトロニック・アーツの創業者など世界的な起業家が名を連ねる。

本では「失敗力のある企業」として、失敗経験を踏んで成功した実在の人物(すべて日本人)の実例を紹介しながら、マッキンゼー、BCG,ゴールドマン・サックス、グーグル、トヨタ自動車、ソニー、電通、三井物産、三菱商事を挙げている。どの人も、失敗した時は誰もががっくりするが、失敗をバネに立ち上がるのが早い。失敗事例をデータベース化して会社の財産にしている企業もある(三井物産、トヨタ自動車など)。

筆者は「日本は“失敗しづらい国”だと言われている。官庁や日本企業の多くはいまだに減点主義で人を評価する傾向にある。この減点主義に大きな影響を受けているのが今の20代だ。生まれてすぐにバブル崩壊し、以降日本経済は停滞しているのだから、挑戦できるような環境に恵まれていない。」と言う。これからのグローバル競争時代に向けて、人材育成も含めて日本の風土を変革することも大きな課題と言えるのではなかろうか。