日経ビジネスの特集「アメリカ 萎える超大国」を読んだ

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アメリカの行方に危険信号を見た「日経ビジネス」が特集記事で「ものづくりで破れ、ドルの信認までゆれている」として一石を投じた。

・消え行く黒人文化の首都

アメリカの文化の一端を担ったハーレムが再開発の嵐に見舞われ、黒人がどんどん追い出されている。黒人が多く住み着くまでは高級住宅地だった。確かにセントラルパークの北側で悪くない立地ではある。アメリカでも不動産の価格が上がり、セントラルパーク近接のこの土地に目が付けられたようだ。地上げの先輩日本のノウハウも入っているのかも知れない。

・揺らぐハイテク王国(シリコンバレーが抜け殻になる日)

ベンチャー企業を起こすには中国やインドで起こした方が人件費も安く優秀な人も雇えるのでリスクが少ない。企業の費用はシリコンバレーでのそれの3分の1になる。シリコンバレーのベンチャーキャピタルさえも上海やインドでの企業を薦めている。

・苦悩するトヨタ(モノ作りの文化にも崩壊の危機)

唯一カリフォルニア州に位置するトヨタとGMの合弁企業「NUMMI」での出荷前不良率は他の海外工場の約2倍だ。従業員の定着率の悪さも影響している。他の工場と違いこの工場はGMとの関係もあり「全米自動車労組(UAW)」に所属している。アメリカ人は豊かになって辛い製造現場の仕事を敬遠して、もっと楽して儲かるサービスビジネスや金融などへ行ってしまう。しかも人件費は世界一高い。空洞化は日本と同じで深刻な問題だ。

・米国一極 終わりの始まり

中央アジア?カザフスタンなどでアメリカのプレゼンスが急激に低下している。油田で金持ちになったことも大きいと思われるが米ドルへの依存が大幅に低下した。英国の調査会社の調べでは、イラク侵攻でアメリカの世界ブランド:コカコーラ、マクドナルド、ナイキ、マイクロソフトなどへのブランドロイヤリティが下がっている。

・ドル基軸通貨制にも不安

ドルが国際決済の基軸通貨であるためにアメリカは国際収支が大幅赤字でも財政の赤字も平気だった。極端に言えばドル札を印刷すれば良いからだ。黒字国は自国の通貨の上昇を嫌って米ドルのままで米国の国債を買って保有する。その結果アメリカでは短期金利よりも長期の金利の方が安い、逆転現象が起きている。ユーロでの決済が増え、中国の膨大な外貨:ドルの運用先が変われば大変だ。アメリカシステムの前には大きなリスクが横たわっている。これらは全てアメリカが自国の利益のためにしたことが裏目になって出て来ている現象だ。

記事全体としての印象は「部分的な事実の一般化」が行われているように思えてならない。アメリカはそんなに「やわな国」ではないはずだ。むしろ日本のことの方が心配だ。日本には「政治家」不在で「政治」がない。明確なルールもない。

1件のコメント

  1. 宮武克己

    安蔵さん ありがとうございます 買わずして、読まずして、エキスのところはしっかり掴み取れます (まあこんな楽読?してると読書力おちるから自己を戒めないと・・)最後段で安蔵さんが懸念表明されたことは、(残念ながら)2月末から資本市場で現実となってしまった

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