軍事アナリスト小川和久著「日本の戦争力」を読んだ

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先ごろ韓国では「韓日戦えば」のシミュレーションが行われたそうだ。戦力比較では日本が圧倒的に勝ったそうだ。竹島問題の先鋭化もあり韓国では大ショックであったようだ。

では本当に日本がそんななに強いのかを知りたくなった。この本が適当だろうと思い「日本の戦争力」を買って読んだ。結構知らないことが多かった。戦後の日本人は「戦争音痴」だ。戦争や軍隊についてはそれこそ何も知らない。戦力を前提の外交などは出来るわけがない。

日露戦争時にあれだけ外交に強かった国がなんでこんなになってしまったのか不思議でならなかったが、この本を読んで納得がいった。外交官が利権集団化してしまい、国益よりも私益・省益に走ったことも勿論ある。戦争を放棄して「平和外交」という実体のない世界=隘路に入り込んでしまったことも一因と思えてならない。

「百戦百勝は善の善なるものにあらず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり」(孫子)

孫子の兵法のこの言葉は一見「平和外交」に似ているが全然違うものだ。あくまで兵力と戦争を前提とした駆け引き(外交努力)で「戦わずして勝つ」ことを意味している。

日本の兵力で世界的に突出しているのは掃海能力と潜水艦探知・駆除?能力だそうだ。決定的に不足しているのがパワープロジェクション能力(戦力投射能力:数十万規模の陸軍を海を超えて上陸させ、敵国の主要部分を占領し戦争目的を達成できるような構造を備えた陸海空の戦力)だ。

水泳は得意だがマラソンや自転車は全然駄目なトライアスロンの選手みたいなものだ。一人では戦えない。

勿論これはアメリカの希望でそうなっている。掃海能力と潜水艦探知・駆除能力共にいわばパッシブな戦闘力で受身だ。いかに無理難題を吹きかけられてもこの戦争力でアメリカに戦争を始めることなどは「夢にも」出来ない。ドイツも同じ様になっているが大陸国であり陸軍の兵力は日本とは桁違いに大きい。アメリカを苦しめた「独海軍」は日本と同様に未だに兵力と言われるほどのものはない。

「日韓戦争シミュレーション」でも日本はイージス艦など近代兵器の数では上回っていても、実戦配備とモラールの点でどうなるかは分からない。

以前(第1次世界大戦)は戦争に負けても数十年で復活したが今は一度負ければ百年たっても敗戦国は戦勝国に軍事面で追い付くことは出来ない。産業構造から頭の中まで変えられてしまうからだ。

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