ドラッカー研究会の会員のお勧めでNPO法人「江戸城再建を目指す会」のシンポジウム「日本の木と森と考える」へ参加した。新木場の木材会館で行われ、200名ほどが参加していた。
木材会館は基本は鉄筋だが外壁のコンクリートにも木材の質感を残しており、ホールの壁や天井には桧が使われており、木材のぬくもりが感じられる面白い建物だった。8階建てだったが外国では10数階の木造建築があるそうだ。木材会館も木造にすれば良かったのにと思った。自信がなかったか、お金が掛かり過ぎて駄目になったのではと思った。
木材会館の外観
展示された木材のオブジェ
木材会館の講堂(内装は全て桧だ)とパネルディスカッション
懇親会(参加者の平均年齢は非常に高い)
地下鉄新木場駅
さすが木材の本場だけあって駅の看板も木彫で漆塗りだ。駅構内にも木彫の看板と木組みの模型が有った。残念ながら余り注目する人はいないが・・・
以下のお話しがあった。
1.日本里山の植生景観の変遷 京都精華大学 小椋純一教授
2.古建築に使われている材種について 広島大学 三浦正幸教授
3.日本の森林・林業と木材利用の推進について 林野庁 沼田正俊次長
日本は古来から木材資源の豊富な国と思っていたがそうでもなかった事が分かった。六甲山や京都の比叡山なども殆ど禿山だった時期があったようだ。安土桃山時代も木材に乏しい時代で建築には桧などは使えなくてもっと下級の木が使われていた様子だ。それで煌びやかに塗りたくる必要があったのかもしれない。
「全国にあるお城で鉄筋で出来たものは50年から70年で寿命が来てしまい、これから続々と廃城になる物が出て来る。木材で出来たものは千年もつ」と広島大学の先生は言われていた。初めて聴く話だ。大阪城を始めとする全国の鉄筋の城は大いなる無駄遣いだったことになる。今頃言われても遅い。林野庁の次長は日本の森はドイツのそれに比べて林道の整備状況が悪く(疎である)木材の搬出にお金が掛かって林業が成り立たないと行っていた。ここ20年くらいで土木建築に無駄に使ったお金は数十兆円あるはずだ。何故そんな分かり切った事が出来なかったのか理解出来なかった。
最後に質問の時間があったので質問した。「木材のお城は千年持つのに我々庶民の木材の家は何故40年位しか持たないのか。私の周りにも一生に2軒も家を建てた人がごろごろいる。欧米では家はストックだが日本ではフローだ。これではたまったものではない。何とかならないのか?一時200年ハウスが喧伝されたが最近は鳴りを潜めている。」
答えには窮した様子だった。「木造の建築は柱の大きさの乗数倍で長持ちする。10cmの柱だと40年位しか持たない。30cm位の柱を使えば100年持つかも知れないが高くなりすぎる。」要するに答えになっていない。
エリート建築である城や寺社は千年持つが庶民は諦めろと言うことだった。柱の話ははじめて聴いた。前から知っていたら自分の家も30cmの柱で建てた。200年ハウスだって柱を太くすれば出来るはずだ。誰かの利権を反映して「200年ハウス」が企画されたが権力構造が変ったので誰も言わなくなったものと思われた。この国にはあるべき姿=理念を考え、語る人があまりにも少ない。
今の建築基準法が木造の歴史的建造物に対して理解に乏しくむしろ寿命を短くしているとの話もあった。江戸城の木造での再建には賛成だがこの人達には力がないことが良く分かった。コミュニケーションしていない。誰も分からないことにはどうしようもないからだ。募金をしているそうだが「お金の監理」も出来るのか心配になった。