冬の上海へ2(蘇州へ新幹線で)

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今日は新幹線で蘇州へ行くことになっている。9時5分発の列車で30分ほどで蘇州に着いた。東海道新幹線で言えば小田原近辺の感じだ。料金はJRグリーン車相当の一等車で65元だから15円/元とすれば結構安い。色んな表示も切符も簡体字ではあるが漢字なので分かり易い。セキュリティの為かぎりぎりの時間まで改札を開けないので号車の遠い人は乗るのに必死だった。

疾走する和偕号(翌日杭州へ行く時に車から写した。乗車していては写せない。手前は建設中の高速道路)

先ずはバスで中国四大名園の一つで世界遺産「留園」に行くことにしていた。でも幾ら探しても聴いても留園へ行くバスの乗り場が分からなかった。駅前周辺は「建設中」だらけで、カオス状態だった。仕方ないので一周して又タクシー乗り場へ戻りタクシーで留園へ行った。

留園は明代16世紀の作で、豫園みたいな中国様式の庭園だ。庭というより建物が中心で、多少の池があり、石を配した石庭だ。いわば建物群と石群が組み合わされたコンプレックスだ。石組の園路や廊下、建物が実に素晴らしい。ただし建物は皆同じ様に見える。日本の庭には「空」の部分があるが、中国の庭にはあき部分がなく、すべて埋め尽くされている。西洋の庭園に近い。建物と水辺の調和は素晴らしい。特に建物に引かれる。

ついでタクシーで有名な天監年間(502~519)に建立された寒山寺へ行った。禅宗の古刹で中国各地から修業僧が集まってくる。唐代の詩人・張継の七言絶句「月落ち烏啼いて霜天に満つ 江楓の漁火愁眠に対す 姑蘇場外寒山寺 夜半の鐘声客船に到る」で有名だ。句碑もあった。屋根の規模は小さいが、瓦のしびが唐招提寺のそれにそっくりだった。嬉しい発見だった。

留園から寒山寺へいたる街道は並木が実に素晴らしかった。中国では何処へ行ってもこのような素晴らしい並木に出会い、はっとすることが多い。これこそが文化遺産だ。日本の禅寺を見なれた眼には寒山寺は禅宗の寺としては一寸派手だ。

次に行こうとしてタクシーを捜したが中々見つからなかった。待っていると白タクや人力車の客引きが実にうるさい。新しい大きな門があったのでそちらのほうへ行って、良く見たらここにもお寺があった。広い庭の奥に3,4階建の建物があり部屋中をスミからスミまで占めて超特大の鐘が釣り下がっていた。直径10m、高さは15m以上あった。低音の鐘の響きが凄かった。

ついでタクシーをやっと捕まえて、世界遺産の明代の1509年に造園された水の都にふさわしい池が美しい「拙政園」へ行き、

さらに歩いて近くの14世紀元代創建の石に庭園、世界遺産「獅子林」へ行った。獅子の形をした岩から名づけられた。

どこも皆同じ様な作りなのでもう止め様かと思ったが、来たついでなので同じく世界遺産で、江南地方最古の10世紀唐代の末期に作られた「艙浪亭」へ行った。池に囲まれた静かな庭園だ。

「両師園」最近世界遺産になった庭園へ行った。夕日に映えて建物が美しかった。

もう完全に飽きて疲れてしまった。レトロなショッピングエリア「山糖街」へ寄って駅へ出ようと思っていたが、5時過ぎてタクシーが全然来なくなった。仕方が無いのでバスで行こうとしたが30分待っても所定のバスが来ない。バス停は鈴なりで自分のお目当てのバスが来ないかと必死で皆車道へ乗り出して見ている。極めて危険だ。バスの運転手はとても不親切で、適当な所へ止まってしまい、いち早く見つけて走らないと行ってしまう。次のバスは何時来るかわからないので皆真剣だ。入口へ殺到して大騒ぎだ。乗り遅れた人は大声で叫ぶが、バスは知らんフリをして行ってしまう。バスには到着時刻の表示はなく、始発と終バスの時間が書いてあるだけだ。中国社会の貧しさを目の当たりにした感じだ。多分バスは最下等な乗り物なのだ。

新幹線の時刻までには2時間も有った筈なのに、1時間たっても「山糖街」へ行くバスが来ないので、直接新幹線の駅へ行くことに切り替えた。202番のバスが新幹線「蘇州駅」行きのバスだ。これが何時まで待っても来ない。反対方向へは202番のバスが続けざまに3台も4台も来ていた。時刻表の到着時刻の表示が無い訳が分かったが、どうしようもない。やっと来た寿詰めのバスで駅へ向かった。このバスも不埒な奴で駅から1kmもある所でここが終点だと全員降ろされてしまった。中国の運転手は官僚なので実に不親切で横柄だ。

バスから見たら橋に屋根が掛かりライトアップされて実に綺麗だった。今回の蘇州観光は失敗だったことが分かった。水の都なのに古びた『世界遺産』のみを見て廻ってしまったこと、冬に来たので運河めぐりの観光船が運休だったことだ。

結構綺麗な水辺があったが観光案内は『世界遺産』ばかり宣伝していた。『世界遺産』なら30元もの入場料金を取れるが水辺だとそうは行かない。しかし運河を廻る乗り降り自由な遊覧船を走らせれば世界遺産だけではなく遊覧船の料金も収入になるはずだ。旅行者の効率も良くなる。

通りすがりに見た水辺の風景(これぞ水の都 蘇州という感じで、とてもお洒落だ。雰囲気が似ているフランス・アルザスの古都コルマールを思い出した。)

中国旅行で気になったのは観光客の殆どが個人旅行者ではなく団体で来ることだ。はぐれても分かるように皆同じ赤い帽子を被っている。そのため観光地へタクシーで来る人が相対的に少ない。駐車場もバス中心で自家用車で行くと駐車場が極端に少ない。

帰りの新幹線は予定通りに来た。大した料金ではないので日本のJRのグリーン車に相当する一等車を予約していた。南京からの列車だったが見慣れない大きな荷物を持った人たちが乗っていた。服装も他の乗客とは全然違った野暮ったいもので2等車が満員だったので1等車へ振り替えてきたようだった。中国の格差は結構凄い。見ただけで分かる。