赤坂ACTシアターで松尾葉子指揮「ペールギュント」を聴いた

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1982年にフランスのブザンソン国際指揮者コンクールで女性として史上初めて、また日本人としては小澤征爾についで二人目の優勝という壮挙により、一躍注目を集めた松尾葉子指揮、アンサンブルフォルテ演奏の「ペールギュント」をTBSの赤坂ACTシアターで聴いた。

子供向けとかで、稲垣美穂子のナレーションが入り、舞台の前や後ろでは結構多くの人達がバレー風の踊りをしていた。「アニトラの踊り」以外は、余り曲に合っていない感じだった。

指揮も演奏も素晴らしかったが、ナレーションが長く、踊りも冗長で、音楽が薄められてしまい実に残念だった。管もきれいで、ハープの演奏もストリングセクションも素晴らしかったが、演奏と演奏の間にナレーションや踊りが長長と続くために音楽が台無しになってしまう。

TBSの夜(地下鉄赤坂駅から飾り時計まで)

「子どものための」と銘打っているのに、子どもは一人もいなかった。爺さんや婆さんがこれでもかといた。グリーグがこの現場を見たら、嘆き悲しむことだろう。勝手にレベルの低いコラボレーションなど行ってはいけないのだ。「ミューズ」も怒っているに違いない。

それにしても、同じブザンソン組なのに、小澤征爾と松尾葉子との間には決定的な壁がある。この世界では未だに男女差別が強いことをうかがわせる嫌な感じの出来事だった。変な女が主役を張って、世界的な指揮者が陰に廻るのは、極めて「日本的な」現象なのかも知れない。資源のない日本なのに、貴重なソフトパワーを無駄にしている。