日経ビジネスで「日本主導(ジャパン・イニシアチブ)」を読んだ

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グローバル化してビジネスの世界でどうすれば日本が主導権を握れるかを事例で持って考察した意欲的な試みだ。元気の無い日本にはカンフル剤として有効かも知れない。

□コマツの自動制御ダンプカーの事例

コマツでは前からレザー光線を使い広大な土地でブルドーザーで地均しをする時に活用していることは知っていた。広い土地では人間の感では水平にならした心算でも数キロも先では10M近くの誤差が出てしまうからだ。レザービームに沿って均して行けば何十キロ進んでも1mの狂いも無い。今回の記事はGPS搭載のダンプカーで広い鉱山で自動運転する話だ。一般に鉱山は辺鄙な所にあり人件費も高くなり、人を雇えば宿舎その他にも膨大な経費が掛かる。コマツでは無人のダンプカーでこれらの問題を全てクリアして世界の鉱山を席巻しようとしている。参考サイト

□東芝の原子力発電事業

ウェスティングハウスの買収で一躍有名になった東芝の原子力発電事業だが、東芝ではウラン鉱山まで手に入れた。原子力発電事業の最上流のウラン生産から運転・再処理・再発電までの原子力エネルギーのトータルサイクルを手中にして勝ち組を目指している。

東芝の原子力サイト

□シャープの太陽光発電事業

同じように太陽光発電事業の最上流の原材料生産から発電システムの開発生産・発電までの一貫システムを手がけている。

シャープの太陽光発電事業

■残念な事例・・社会インフラとして注目される「水道システム」(これは記事ではない)

ここの記事には無いが海水の淡水化などで日本企業は圧倒的な強みを有するが水をトータルに処理する「水道システム」ではバイプレーヤーだ。システムの一部を担うに過ぎない。フランスの水道メジャー(ヴェオリア、スエズ)の2社が世界を牛耳っている。日本の自治体の水道事業にさえ時々顔を出すので知っている人は多い。サルコジ大統領は後進国へ行くときに水道メジャーが同行してトップセールスで後進国にとって統治上最重要な水の大型商談を決めてしまう。昔ド・ゴール大統領が池田首相を「トランジスターのセールスマン」と称したことを苦い思い出として甦る。フランスが偉そうになんだ。という思いと日本の政治屋は日本語も碌々読めず自分の政権維持だけに汲々として民間の政治的な支援などは全く出来ていないからだ。

■デファクトスタンダード・世界標準

日本はトロンとWindowsの戦いで政治家がアメリカに遠慮をしてトロンを潰した。世界標準作りでも参加すらしてないことが多い。

スポーツの世界でも同じだ。ノルディックのスキージャンプでは背の高さでスキーの長さを決められ日本人には極めて不利になった。F1でも絶えず日本に不利なルールは変えられた。ルマンでもマツダがロータリーエンジンで優勝するとロータリーエンジン搭載車はエントリー出来ないルールに変えられた。日本のお家芸の柔道でもルールが変えられて北京オリンピックでは大分苦戦していた。

■世界標準を取りに行く

官民を上げて世界標準を取りに行かなければ「日本主導」等は有り得ない。RFIDでも負けたし、今や太陽光発電でもトップの座をドイツに明け渡している。デファクトスタンダードを取るのはスピード感に欠ける日本企業には難しい。世界標準は然るべき会議で決められるのでチャンスはもっと大きい。会計基準でもそうだったが大体はアメリカとEUの主導権争いになる。中国も割り込んでくる可能性もある。

軍事に余りお金も知力も人材も割かないで済んでいるのでその位の人材を用意して米欧の間でしたたかに立ち回り、主導権を握ることは可能なはずだ。外交官のレベルアップとミッションの再構築が必要だが・・・もっともっと大切なのは政治のレベルを欧米並みにすることだ。政治主導が無くては世界で主導権を握ることなど有り得ない。ここでもやはり2,3世議員の無能さや優秀な人たちが政治の世界へ入れない仕組みが問題となる。