渡部昇一著「知的生活を求めて」を読んだ

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私の尊敬する渡部昇一さんの知的生活の基盤としての極めて軟弱な肉体から出発していかにして今の知性と知的生活をエンジョイできるようになったかのヒストリーを記載した「知的生活の参考書」だ。凡人には余り参考にはならないが・・

氏によれば肉体の強さを誇った友人たちは相対的に早死にしているそうだ。虚弱児の方が労わりながら長生きしているそうだ。体も弱く目も弩近眼で、歯も虫歯だらけおまけに音痴だった著者が如何にしてそれらを克服したかが自叙伝風に綴られている。

知的な静寂空間を確保したパティオのあるロの字型の家のできるまでと外界遮断のロの字型家のメリットを克明に書き記されている。

私も知的生活を求めて還暦を過ぎたがさしたる成果がないままに今日に至っている。渡部さん程には虚弱でもなく目もそれほど悪くはないし歌もうまい。しかし知的生活では比べようもない。結局は知的な好奇心が弱かったのかも知れない。比較すること自体が間違っているのかもしれないが・・・

渡部さんの経歴を見ると上智大学へ入られて「鶏口」となられたことが幸運を呼んだのではないかと思う。ニッチなエリートコースを歩まれて来ている。これは途中の経過を述べているのであって、世に出てしまってからはどのようなコースを辿られようが実力次第であって、実力があったから今日があるのに違いはない。

しかしこの本は見方によればちょっと厭味な自己宣伝的な内容が多い。本を沢山書きすぎるとこの様な陥穽に陥る危険性を誰もが孕んでいる。渡部さんのファンとしてはこの本は書かない方が良かったのではと思う。