日高義樹著「アメリカの世界戦略を知らない日本人」を読んだ

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ブックオフで105円で買った日高義樹著「アメリカの世界戦略を知らない日本人」を読んだ。2003年2月発行なので若干古くなった部分もあるが啓発される部分が多く面白く読めた。何よりも気に掛かったことは私を含めて日本人はアメリカのことを余りにも知らないと言うことだ。

日本の株価はNYSEのミラーリングみたいなことを何時でもやっているし、政治の世界でもアメリカの言いなりだ。我々一般国民が知っている以上に裏ではモットモットアメリカの言いなりになっているはずだ。先般の中国の毒入り餃子の件でも何故公表しなかったのか問われて「中国からの要請があった」と悪びれもせず堂々とマスメディアの前で公言している外務大臣は国家としての尊厳と誇りをなくしている典型的な日本の政治屋の情けない姿だ。

この本の中で気になったのは「アメリカは日米同盟を必要としなくなった」の件である。北朝鮮のテポドンや原爆所持で軍事力の必要性をやっと分かりかけた日本人が出て来て、日米同盟(双務的ではないので正確には同盟ではないが)の現実的な必要性を認識し始めた。まさにその時にアメリカから見て日米同盟は必要なくなったと言われれば日本人は皆びくついてしまう。ソ連の脅威がなくなった上に中国の脅威も払拭された。90日間海底の奥深く潜んでいることが出来、海中深くからミサイルを続けざまに発射できるアメリカの「トライデント」型原子力潜水艦の配備で事足れることになってしまった。搭載のピンポイント攻撃の出来る正確な誘導ミサイル「クルージングミサイル」84発と原爆搭載ミサイル「トライデント」12発(1発に広島投下型原発の20倍の破壊力を持つ核弾頭を10個搭載)でアメリカはいつでも旧態依然の中国軍200万と主要軍事拠点を壊滅出来る目算が立ったからだとしている。24H365D中国はこの脅威に晒されることになる。アメリカが単独行動を取り始めた本音は自分だけで戦えるからだ。イラクの米英連合軍でもイギリス軍がアメリカ軍にとって邪魔だったとされている。

自国を自分で守ることなど一度だって真剣に考えたことのない我々日本人はアメリカなしで北朝鮮のテポドンや原爆からどの様にして自分を守るか?中国からの脅しに対してどう対処すべきかを知らない。多分外務大臣も知らないのではないか?あのような情けない発言を聞けば中国と対等に渡り合えないでいる日本の政治家の無能力さが嫌でも見えて来る。小泉流の100%対立と媚中の間の隙間は多いはずだ。能力のない2世政治家が大勢を占め、本当に能力のある人が政治の世界から締め出されていることがこの様な事態を招来したのでは思われている。

宦官みたいになってしまった官僚にも問題があるようだ。自分自身と省庁の利益ばかりで、「国家目線」をなくした人たちの集まりが国を危うくしていると言われて久しい。資源がなく加工貿易に頼らざるを得ない日本国としてはグローバリズムの流れは順風であるはずだ。WTOでも自国農業の保護ばかりに目が行き、アメリカとインドとのケンケンガクガクの大議論に蚊帳の外でじっと身を潜めていて、協定のご破算に手を貸してしまった。本来、先進国と新興国の間に分け入りリーダーシップを発揮して協定を纏め上げなければならない立場だったはずだ。

内向きの官僚や政治屋には「行動原理としての」国家視点も世界視点もないようだ。多分WTOもあれで内内では成功したと言って褒められているのかも知れない。国の将来が怖い・危うい。

ドイツ・フランスなどの官僚国家が皆傾いて来ている。ドイツは元々西ドイツ4,000万の人口で2,000万人が右より、2,000万人が左よりの国だった。東ドイツの併合で2,000万人の左よりの人口は加わり完全な社会主義国家になった。その結果官僚主義がはびこり、福祉優先で働かなくなり、組合が強くなり、大企業は元気がなくなり、ドイツからの脱出を考えている企業が多いそうだ。「他山の石」とすべきだ。