「2006年日本はこうなる」

Pocket

UFJ総研異業種交流会で調査部長五十嵐さんの「2006年日本はこうなる~景気・金利・為替の行方~」の話を聴いた。一寸長いが要旨は以下の通り。

UFJ総研公式サイト

異業種交流会風景

1.対外不均衡が止まらない米国経済

 収入よりも支出が大きい米国経済。独特なローン制度(当初7年間元本返済なし。金利のみの支払い)により住宅投資を続ける米国市民。 775千ドルの家(レンタルで家賃4,000ドル/月相当)かって7年後に売却すると、年率5%の価格上昇とすれば1.090千ドルで売れて、支払利息等の全てを引いても171千ドルの利益になる。価格変動がなく同じ値段で売っても、144千ドルの損失であり、家賃に直すと月額1,700ドルである。4,000ドルの家賃の家に1,700ドルで7年間住んだことになる。今のローン金利5,5%と住宅の値上がり見込がある限り住宅建設は永遠に続く。この不足資金の出所は中国やアラブの石油ドルであり、米国の対外収支の不均衡の原因だ。

2.小幅の切り上げに止まった人民元改革

 米国政府の10から20%切り上げ、米国製造業の40%切り上げ要求に対して2,1%しか切り上がらなかった人民元。92%もドルにウェイトを置いたマーケットバスケット方式は実質的にドルリンクの固定方式に近い。 内政の問題等で大幅切り上げを避けて介入を継続する中国人民政府。結果大量の外貨(米ドル)が溜まる。行く先には「ドル下落の大リスク」が待ち受けている。

3.高止まりが続く原油価格

 原油先物市場(WTI)は原油の高止まりを示唆。アジア新興国の需要拡大が大きい(2004年拡大分の30%以上が中国)。生産余剰能力も縮小し、過去最高値を更新。 大幅に低下している日本の石油依存度。日本以外のアジアは省エネ余地が大きい。GNP百万ドル当りの純原油輸入では、日本は374億バレル、に対して中国は735億バレル。中国は日本の2倍の原油がないと同じ国内生産を維持できない。

3.日本企業の収支改善のファクター

 98年~04年で見た場合、24兆円の利益改善。しかし大半が支払利息減(19兆円:金利低下の結果)、支払人件費減少分(約3兆円:リストラの結果)によるものだ。 鉄鋼・石油・石炭等の素材産業は原油価格高騰の価格転嫁に成功し絶好調。ただし加工業は価格転嫁が出来ていない。悪化の一巡した電気機械、材料費のかさむ自動車。企業規模によっても収益力に大差。製造業の回復が遅く、非製造業の回復が早い。