前回のJASIPA定期交流会で「SI企業の発展段階説」を話した。およそ以下のようなことだ。
1.まずはSE派遣会社として誕生(IT大手又はエンドユーザ常駐)
2.SE自社常駐でシステムモジュールの一部を受託開発(IT大手より)
3.SE自社常駐でシステムの一部を受託開発(IT大手より)
4.SE自社常駐で業務単位で受託開発(IT大手より)
5.エンドユーザー常駐でシステムの一部を受託開発(IT大手主導もある)
6.SE自社常駐でエンドユーザーの業務システム開発
7.ノウハウを蓄積してアプリケーションパッケージを開発して販売・カスタマイズ受託
8.資本を蓄積してアプリケーションサービスベンダー(ASP)になる。(ストックビジネスのため定常的に収入があり企業を安定軌道に乗せられる。しかしシステム陳腐化のリスクはいつでもある。今のSaaSベンダーの悩みもそこにある。)
もちろん1から8までは1段づつ駆け上がるものではなくステップが違うビジネスドメインを平行して持ち続けるものである。SE派遣も行うが受託開発も行うといった具合だ。会員企業SA社のA社長はこの説に対して欧米流の押し付けではないのかと言われた。彼の主張は以下の通りだ。
いつまでもSIerでいて何も悪いことはない。日本企業の強みを支えてきたのは独自システムにこだわって開発してきた成果である。日本株式会社の世界に対する強みの源泉になった独自開発ITシステムは世界に誇るべき文化だ。この様に、システムの全てを注文で開発するノウハウは外国のIT企業にはない。日本のIT企業は今行っていることに対してもっと誇りと自信を持つべきだ。
日本のIT企業が欧米のIT企業に比して儲からない、先進性がない、世界で戦える商品や独自性がない等々のことを考えるとにわかには同意できないが、一理はある。
日本型のシステム開発ではどうしても工数ビジネスになってしまい、技術力をお金に換算する仕組みがないことが決定的な弱みだ。システム開発が下手で工数を喰い、システムの修正に時間をかけた方が工数ビジネスではむしろお金になる。従って個々のSEやSI企業の技術力を磨き上げる動機付け(インセンティブ)が乏しくなってしまう。
この方式の良さは世界で勝っている日本企業がある意味証明済みだ。この方式に自信をなくしてもたもたしている間に中国やベトナムのIT企業がこの方式のノウハウを習得してしまい世界に打って出てしまうかも知れない。
忘れていけないこともある。この方式ゆえに開発費がかさみ中小企業のIT活用が遅れ、世界の競争で落伍している事実だ。この方式は確たるビジネスモデルを構築でき、お金も人材も豊富な大企業向け限定の開発スタイルなのかも知れない。
世界的になったトヨタの生産システムでもそうだが日本システムの良さを世界に分かるように理論化できる日本人の学者はいない。ITの世界でも日本型の開発をけなす学者はいても理論的に良さ・悪さを解明する学者はいない。「JIT」も今や「サプライチェーン」として汎用化されてしまい、「日本発」が分からなくなっている。日本の学者は実学でもノーべル賞級の研究でも役に立たない。