日経BP IT TREND2007 特別講演「松下電器におけるIT経営革新」

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ホテルニューオータニで日経BPセミナー「イノベーションが創る『明日の経営』」に参加した。9:25~17:50までの長丁場だ。時間の関係で最後の特別講演「松下電器におけるIT経営革新」だけを聴いた。中村改革のビフォー・アフターについてITの視点からかなり具体的に話をされた。

1.中村さんが社長をしていた関連会社でSCMを導入して、ITの威力を見せ付けた。

海外量販店のトップからWeekly Supplyを要求されそれに対応した。中村さんは「Japan As NO.1」ともてはやされ、落ち込んだアメリカがITの力を活用して復活する10年間のプロセスをアメリカにいて実際に見て来た人だ。ITの威力は骨身に沁みて分かっている。

2.トップダウンのIT革新のスタート

社長になると満を持して「IT経営革新」を進めた。IT革新に理解の無いトップに対しては2000年から巡回を行い、さらに集合教育も1泊2日の事業場長対象の経営幹部セミナー16回276名、国内国外の工場長対象の工場長セミナー11回265名、その他にもGM、TLレベル対象のセミナーを36事業場で行い1,006名が参加している。半端じゃないやる気丸出しだ。

3.IT革新本部を作り社長が本部長に就任

4.「破壊」と「創造」・・・守るべきは経営理念だけ

・経営に対する基本的な考え

顧客満足・価値の追求、軽くて早い経営の実現、創造的な時間の創出(時間を大切にした)

・ITによる企業革新の重要性

企業主導から顧客主導へ、フラット&Web型組織へ、 IT革新はトップ主導で、 価値を生まない業務は排除

5.IT革新の4つの軸

・SCM 軸、・商品化軸、・CRM軸、・間接業務革新・IT基盤

6.IT革新=Innovation&Transformation

「IT革新なくして経営革新なし」

7.6年間で2,133億円の投資、2,253億円のリターン見通し

今流行のEA(エンタープライズアーキテクチャー)の考え方でITを考えていたようだ。従来の部分最適から全体最適へのマインドシフトを見事に行った。

7.最も重要視したのは「スピードの向上」

・開発(Time To Market)05年で01年比42%の開発リードタイム短縮

・調達発(注から納品までの時間) 05年で00年比70%の開発リードタイム短縮

・生産(源泉工程から出荷までの時間) 05年で00年比75%の開発リードタイム短縮

8.生産性の向上(01年比05年実績)

・営業一人当たりの販売額    1.4倍

・資材一人当たりの購入額    1.5倍

・資材一人当たりコストダウン額 1.7倍

9.経営ITアーキテクチャー(CITA)の構築

・従来IT部門はともすれば受身のシステム開発に走りがちだった。・経営戦略と融合したIT革新の立案。・経営トップ、IT活用部門、IT提供部門三位一体での推進。・上流フェーズを重要視してフェーズごとにDCP(デシジョンチェックポイント)をもうけて妥当性をチェック

10.[IT革新は終わりなき活動]

IT革新におけるトップの役割や重要性に改めて思い知った。心配は松下電器と言えども後継者のトップが中村さんと同じ思いでITに向き合ってくれるのかどうかということだ。中村さんには原点とも言うべき、アメリカでの強烈なITインパクトがありITの威力を肌で感じていたはずだ。しかしその後の社長さんは多分少しずつ想いが違ってくるはずだ。

人間は自分が肌で感じたことでないと中々言い切れないものだ。海外経験の無い社長は何時何処でITの経営における凄さを体験できるのだろうか?中村さんは行ってみれば海外留学で「体験学習」したようなものだ。国内にいてIT部門でなくても経営におけるITの重要性をトップに教育・体験する場がないと日本の企業は欧米やアジアの企業に負ける。