年末に「2007年を読む」ために長谷川慶太郎著「2007大動乱の世界と日本」を買った。直ぐに読む予定だったが時間がなくて、やっと今日になって読み終えた。思えば雑用が多くてママならない年末年始だった。
この本の特徴は我々が当たり前だと思っている常識に対して1段又は2段と掘り下げて「なぜ?」を解説している。それも平易で説得力のある文章で。
この本ではアメリカの強さについての解説にかなりのページを割いている。今やアメリカ無しでは「2007年世界の動向」は語れない。世界のリーダー国としての必須な条件がアメリカには備わっている。今でも健在なアメリカンドリーム、世界からの人材の吸引力、資本主義の原理・原則を死守する仕組みや意思、健全な競争を保証する仕組み、腐敗を防ぐ政治体制・議会主導の民主主義と行政の仕組み、金融の強みを発揮できる仕組み、などなど悔しい位に良くできている。
トップダウンで指導者に能力があれば世界のリーダーとして何処までも走れる仕組みだ。しかも他の国に比して大統領への道はよりオープンに開いている。ここでは触れられていないが多分、政治リーダーを育み、選別する類稀な仕組みも存在するはずだ。
日本の議員の大半は2世3世の議員で占められている。一族以外の優秀な人達が政治の場から締め出されている。結果として日本の政治家は志が低く国際競争力がない。国内でも官僚になめられている。一般市民の政治への無関心も生み出している。そこへつけ込む宗教色の強い政党も出てくる。これでは民主政治の終焉だ。
こんな状況とは一味違った何かがアメリカにはあるはずだ。日本でも民主党が始めた「候補者公募制度」がまだ当選者は少数ではあるが定着しつつある。喜ばしいことだ。「地盤・看板・かばん」で国会議員が決るのでは「民主主義」とは言えない。まるで遠い後進国の話のように聞こえる。
この本では、北朝鮮について中国が責任を持って「ターミネータ役」を果たすと予測している。石油パイプラインの元栓を締めれば金正日体制が崩壊すると言われる。昨年度版では1年以内に中国が崩壊すると言われていた。1年経った今年号では、何も言及されてない。多分当るも八卦なのだろう。「近未来」とは言え、未来を予測するにはリスクがつきまとう。何も責めているわけではない。大胆に予測する勇気を褒め称えているのだ。日本人の著名なジャーナリストではこの様に大胆に言い切る人は少ない。例の共同体の思想だ。今子供達の世界で流行っている「虐め」同様の仕打ちを恐れるからだ。
目次は以下の通りだ。これからも分かるように長谷川さんの考えは明るく楽観的だ。見方によっては甘いとも言える。しかし悲観論一辺倒の日本のマスコミで「楽観論」は貴重だ。
第1章 アメリカの経済力が世界を動かす
第2章 世界のお金を動かすニューヨークの金融市場
第3章 アメリカの楽観主義が世界を救う
第4章 自由貿易体制だけが世界を幸福にする
第5章 アメリカと欧州の格差は広がるばかり
第6章 ロシアと中国の歪な経済発展ぶり
第7章 急落する韓国と成長著しいインド、ブラジル
第8章 改革が進展し飛躍する日本経済
第9章 テロとの戦いは困難だが、確実に前進しつつある
第10章 北朝鮮問題はほどなく金王朝の崩壊でけりがつく