長谷川慶太郎著「超格差拡大の時代」を読んだ

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直言と示唆に富んでいる長谷川慶太郎さんは尊敬する国際エコノミストの一人だ。アメリカ一国支配の時代には戦争は起こらず、デフレ的な経済が持続すると予測している。

なぜなら、通常は資本主義で溜まった垢を戦争でご破算にしてインフレ基調に戻すのが従来の世界だった。 ところが軍事力や経済力・政治力で突出しているアメリカを相手に戦争をする国は世界のどこにもいない。その結果世界は絶えず供給過剰になり、デフレ傾向が続くと言うものだ。しかも平和な世界では経済のグローバル化は益々進む。コモディティ製品では世界規模での絶えざる値下げに直面することに成る。日本が生き延びていく道は高級品を安く(大量に)早く生産して他の追従を許さないことだ。そのためには設備投資を絶えず大規模に行ってゆく必要がある。また大規模な設備投資と研究投資が出来るためには規模の拡大が必須だ。そこでM&A等による企業買収や併合が盛んになる。

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私見であるが一時、「ニーズの多様化による多品種少量生産」がもてはやされた。まるで大量生産は古い生産形態と言わんばかりの勢いだった。DRAM,SRAM等の半導体が韓国に主流を奪われたのはそんな時だった。共同体型の日本の経営者には大規模投資決断が出来ないで先延ばしにしていた。「その隙をトップダウンの韓国の経営者が突いだ」形だ。ノウハウは日本の技術者からも半導体製造装置メーカからも試験機メーカからも韓国に洩れた。

この失敗を糧として日本の薄型テレビメーカは垂直統合で虎の子の技術流出を防ごうとしている。しかし自社の技術者が韓国出張して安く技術を教えてしまえば何にもならない。技術者の心に鍵をかけないといけない。最近もロシアと中国に技術情報を流していた一流企業の技術者が逮捕された。性悪説に基づく危機管理が今や必要だ。