西尾幹二著「日本はナチスと同罪か」を読んだ

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日本の戦争犯罪とナチスの行った犯罪の違いが実に明確に記述されていた。私の理解不足と一般教養の不足で要約に誤謬があるかも知れません。敢えて記述してみたいと思っております。今まで中国や韓国はドイツを例に出して日本の戦争終結努力を批判してきました。なんと調子に乗ってドイツまでが日本を非難したのです。これは分を弁えない思い上がった行為です。以下に日独両国の戦争の相違点を箇条書きにします。

1.ナチスの犯罪は「人道に対する犯罪」

ナチスはユダヤ人の絶滅を大規模に科学的に計画し実行した。敗戦の色濃くなってから重点的に行っている。戦争とは別次元の優先度を持って。これが「人道に対する罪」である。日本には「戦争犯罪」(戦争に伴って発生する民間人の抑圧や殺人。勿論あってはならないことだがこれは英米仏蘭全ての軍隊が多かれ少なかれ行っている)などはあったが人種絶滅などの考えも計画も勿論実行も無い。苛烈を極めた極東裁判でも「人道に対する罪」に問われたものは居ない。

2.1億層懺悔VSナチスだけの犯罪

戦後処理で日本人は1億総懺悔をした。ドイツでは悪いのは「ナチス」だとしてナチスの高官と実際に手を下した下っ端を断罪した。いわば「トカゲの頭と尻尾」だけ切った。直接間接にナチに協力を惜しまなかった胴体の2千万人が裁判官とか官僚とか学者とか民間人として堂々と闊歩し中枢を担いドイツの再建を行った。

3.国交回復

日本は「サンフランシスコ講和会議」で講和条約に調印し戦争関係を終結した。ドイツは東西分割もあったが未だに国際法上は戦争を終結していない。交戦中である。

4.国家賠償

日本は講和と同時に国家賠償を行った。ドイツは限定されたユダヤ人に対して個人的に補償を行った。国家賠償は一切していない。いかに金持ちドイツでもポーランドやソ連に対して行った破壊と殺戮の賠償を支払えば国が持たない。それではアメリカも困る。知らん振りを決め込んでいる。

5.ロシア支援

ドイツは300億米ドルの支援をロシアにしたと公言している。当時、日本に対して援助額が少ないとしてコール首相が恫喝を行った。しかし援助の内訳は東ドイツからのソビエト軍の撤退費やソ連領に居たドイツ人の資産没収の金額や諸々の金額を含み、真水の部分はごく小額だった。全体の5%

6.ドイツVSロシア

ドイツは第2次世界大戦でソビエト人を20百万人殺している。隣国ソ連の復讐を絶えず恐々としながら繁栄してきた。ソ連の崩壊でロシアとの間に沢山の国が出来て、ドイツは安心して寝られるようになり狂喜した。そのご祝儀が援助だ。20百万人の命と破壊の代償であれば全額が真水であっても300億米ドルは決して多くはない。

日本はソビエトに借りは無い。あるのは不可侵条約を破って進入してきたソ連軍からの被害と「ラーゲリー」での戦争捕虜の不当な扱い(虐待。それも終戦後)に対する抗議と固有の北方領土を未だに不法占領されている「貸し」だけだ。ドイツとは正反対の立場だ。

現実を誤魔化して実利を優先したドイツの行き方にはどこかで神の鉄槌が下る可能性がある。ロシアの復讐よりも怖いかもしれない。反省不足の結果として第4帝国みたいな物が出てこないとは限らない。自分自身の問題だ。

ドイツのワイツゼッカー元大統領の政治的な言い逃れの多い演説を神格化して崇めるとか、この本は史実や現実を理解しないで「軟弱・謝り外交」を続ける国家指導者や外交官またそれを強いる勉強不足のマスコミに対しての啓蒙も目的だ。「日本人がもっと誇りをもって生きられる」ように。政治家はもっと歴史を勉強すべきだ。国際的な駆け引きでは史実と今の現実が戦いの始だ。知らなかったでは済まされない。私も知らないことが一杯あってとても役に立った。

西尾幹二氏のブログ