「人材育成」カテゴリーアーカイブ

ダ・ヴィンチは生み出せるか?!

あけましておめでとうございます。

コロナウィルスが拡大する局面での厳しい新年となりました。コロナ禍で世界的にいろんな問題が顕在化しています。その中で年末年始に今後の人材育成に関して、大学の教育改革の宣伝が目立った。

まず、大晦日の日経新聞2面に渡ってレオナルド・ダ・ヴィンチの顔で演出した広告に目が留まった。立命館大学の広告だ。以下に広告の文言を紹介する。

2024年.かってない挑戦をはじめようと思う。それは、超多才能人材を輩出することだ。2024年、映像学部と情報理工学部が、経営学部・政策科学部・総合心理学部・グローバル教養学部と同じキャンパスへ移転する。これは単なるキャンパス移転ではない。全く違うジャンルの膨大な知をまぜ、共鳴させ「高度な武器を複数持つ塵埃」を育てうみだす、未来への取り組み。

かって、ペスト大流行後の世界に現れ、美術、数学、解剖学、建築、音楽、天文など多くの分野で活躍した天才レオナルド・ダ・ヴィンチのように、コロナ後の世界を立て直し、社会をつくりあげていく超多才能人材は、常識にとらわれないわたしたちの挑戦から、うまれるはずだ。

不可能は、いつか誰かが可能にする。ならば、その「誰か」になれ。常識と言う名の天井を壊せ。挑戦を、もっと自由に。

2024年、映像学部と情報理工学部が大阪いばらきキャンパスへ。膨大な血が融合する。超多才能人材育成キャンパス始動。立命館大学

さらに元旦の新聞にも2面に渡って渋沢栄一のアンドロイドを配した目を引く広告があった。社会人の先端教育機構の「事業構想大学院大学」と「社会情報大学院大学」だ。

私がお札の顔になるまでに、ニッポンは立ち直れますか?あと3年先、2024年からこの方が1万円紙幣のシンボルになります。大変化のときであった明治維新に、渋沢栄一は己の才覚と頭脳一つで500以上の事業を興し、時代のかじ取りを担いました。いま、だれもが「何かをいい方向に動かしていかなければ」と道を探す時代に、この傑物のようなアタマの持ち主をひとりでも多く育てたい。それが、先端教育機構「事業構想大学院大学」「社会情報大学院大学」の目指すところです。ここは、知恵をチカラに変え、世の中をダイナミックに動かしていきたい社会人のための学びの場。あなただからうむだせるアイデアが、会社に、ひいてはこの国に活気をとりもどす「きっかけ」になっていくはずです。

今日3日の新聞にも、4面に渡って24大学の学長のメッセージが掲載されている。

冒頭の立命館大学は創立100周年記念として、2000年に日本で初の国際大学として立命館アジアア太平洋大学(APU)を設立した。最近、「還暦からの底力」の本を紹介したが、その著者出口治明氏がAPUの現学長だ(https://jasipa.jp/okinaka/archives/9384)。

元旦の新聞に野口悠紀雄一橋大学名誉教授の、展望2021「日本、先進国から脱落も リモート化に壁」との提案記事があった。「コロナ禍の中で日本の問題が浮き彫りになってきた。その問題点を適切に捉えて次の時代に生かすチャンスとすべき」と訴える。問題の一つは、“世界がリードするリモート化”への壁だ。アメリカでは、20年前からインド人の人材をリモートワークで活用しており、それがアメリカ高成長の実現につながっていると言う。英語と言う言語の問題と、「オフィスにいることに価値を置く働きかたの問題」を指摘し、これが出来ないと生産性は低いままで世界から孤立する可能性があると懸念を示している。

前稿で「技術立国日本は再生可能か(https://jasipa.jp/okinaka/archives/9453)」を論じたが、今の日本の様々な現状がコロナ禍を契機に露呈した。この現状を打破するために大学は動き始めている。企業も将来を見据えどんな人材を育成すべきか真剣で大胆な施策が必要な時期に来ている。

”心の資本”を増強せよ!(日経)

7月1日の日経朝刊「核心(Opinion)」(7面)のタイトルで”心の資本“と言う言葉を初めて知った。これまで、”ソーシャルキャピタル“とか、”ナレッジキャピタル”などの言葉は聞いたが、今回の“マインドキャピタル”とは?(論説委員西條郁夫氏の記事)
記事の出だしには「組織の活力を高め、イノベーションをどう起こすか。世界中の企業の関心事だが、米グーグルが大掛かりな社内調査を経てたどり着いたキーワードが「心理的安全性」だ。」とある。この概念は、ハーバード大学の研究者が唱えた概念で、「この職場なら何を言っても安全」と言う感覚を構成員が共有することだと言う。グーグルでは、こんな「心理的安全性」の高いチームは仮に個々人の能力が劣る場合でも「安全性」の低いチームに比べて、高い成果を挙げ続けることが判明したそうだ。この成果を踏まえて管理職向けの心得帳をまとめたそうだが、その一部が紹介されている。

・部下と話すときは、知らぬ間に否定的な表情を浮かべてないか注意する。
・チームメンバーから学ぼうと言う姿勢で質問する。
・問題が起きても、相手を責めるような言い方はせず、どうすれば問題を解決できるかに焦点をあてる。

こうした小さな取り組みを重ねることで職場の「心理的安全性」が高まり、そこから新しいアイディアやイノベーションが湧き出す。グーグルの急成長の軌跡は心理的アプローチが組織の活性化に多大な効果をもつ証左と西條氏は言う。
カリフォルニア大学のある教授によると「自分は幸福だ」と感じている人はそうでない人より生産性が31%高く、創造性は3倍になると言う。「成功が幸福を招くのではなく、幸福(だと感じること)が成功を生む」とも指摘する。西條氏は、日経論説員として、日本の生産性革命に関して日本のエンゲージメントの低さを懸念する記事を書いている(https://jasipa.jp/okinaka/archives/7809)。“エンゲージメント”とは、「いわれたことを忠実にこなす受け身のまじめさではなく、改善や新機軸に主体的、意欲的に取り組む姿勢」を指す。そして、枯渇気味の”心の資本“を増強するための手掛かりを3つ挙げている。
まず、日立製作所のハピネス計測技術の活用。社員にウェアラブルな心のゆらぎセンサーをつけてもらい、どんな場面で幸福感が高まるかを計測する。あるコールセンターで、上司が適切なタイミングで一声かけると、社員の幸福感が目に見えて上がり、受注率が有意に上昇した事例もあるそうだ。朝礼や会議に社員が満足しているかどうかも即座に分かる。
2つ目は職場の仲間が互いに評価して報酬ポイントを送りあうピアボーナス。送られた人は会社から少額だがボーナスを手にする。このサービスをユニポスが提供するが、メルカリやライオンなど240社の26000人がこのサービスで“”感謝の気持ち“を日々交換し、仕事への意欲が目に見えて上がっていると言う
3つ目は、”自己決定”の重要性だ。進学や就職先を自分で決めた人は、”主観的幸福感”が高いとの踏査結果もあるらしい。会社では今の仕事や配属先を「他人から押し付けられた」と思うか「自分で選んだ」と思うかで幸福感や意欲に大きな差が出るとの事だ。
この記事では、最後に「真の働き方改革を実現するには、社員の心の領域にも光を当てることが必要」と締めている。

ますます厳しくなる社会の変化に追随するには、社員のイノベーション力を高めるしかない。マズローの欲求5段階説の高次の要求(内的欲求)である第4階層(尊厳欲求)、第5階層(自己実現欲求)を満たすのが”心理的安全性“でもあり、考えてみる価値はありそうだ。

”人材戦略”の開示を投資家が要求し始めた!(日経)

6月25日の日経朝刊の社説「投資家に支持される人材戦略を競え」に目が留まった。先先週末、ある企業から講演を依頼され、まさにこれからの時代の急激な変化に対応するには、イノベーション力をいかにつけるか、エンゲージメント度(仕事に対する熱意)をいかに上げるかが大きな課題であり、人材育成がより重要だとの話をしてきたところだった。特に生産性、デジタル化で後れを取っている日本では、AI人材、DS人材の育成が急がれている中で、今回の日経記事で、投資家も「従業員の力を引きだす工夫、それがどのように業績につながるかと言った”人材戦略“の具体的な開示を求め始めている」との情報提供だ。

社説では、「女性管理職比率や、教育訓練費用、人事処遇制度などの情報を単に並べるだけではなく、経営戦略に照らして、どんな人材を確保する必要があるのか、成果主義制度がどのように収益に結びつくのかなど、人材活用の工夫と企業の成長力の向上と連動させて説明することが大事」と指摘する。
海外企業は人材をめぐる情報開示で先行する。例えば、独SAPでは、社員のワークライフバランスを調査し、仕事への熱意や組織に貢献する意欲を“エンゲージメント指数”として算出し、指数と業績を関連付けて開示しているそうだ。

同じ日の日経6面「Deep Insight」“Y・Z世代は知っている”で、やがて働き手の多数派となるミレニアル(Y)世代(今年28~38歳)と、それに続くZ世代(9~22歳)が、ITリテラシーが高く、新しい発想とSNSなどを通じたネットワーク力で今まで誰も想像しなかったビジネスを生み出すとの評価が高まりつつあるという。既に来年の米国大統領選でY世代候補が初めて現れ、日本では、“ESG投資に積極的”とされるY,Z世代の投資家の動きが関心を呼んでいると言う。そのような中で事例として挙げられているのが、社員のエンゲージメントを即座に測定するサービスで、働き方改革の追い風もあり、2年間で1000社近い顧客を獲得したという転職求人メディア「アトラエ」(18年に東証1部上場)だ。これを開発したのがY世代の4人の社員だそうだ。同社の社員(約50人)の5分の3がY世代、5分の1がZ世代だ。同社の新居CEOは「ニーズに敏感で、ITを使いこなせる人材だからこそできる技術革新。こういう人材を年功序列で埋もらせる経営であってはいけない」と話し、組織運営も社員の間に上司と部下の上下関係のない”ホラクラシー組織“を導入している(https://jasipa.jp/okinaka/archives/8774)。

生産性やエンゲージメント度で世界に後れを取る日本は、特にイノベーション力を高めるため、社員のやる気を如何に高めるかが喫緊の課題だ。何か不都合なことがあると部下のせいにする某大臣は官僚のエンゲージメント度を下げ、官僚の仕事のレベルも下げていると思われる。これを反面教師の一つの事例として、企業には、人材育成にもっと力を入れ、やる気をイノベーション力につなげる施策が日本の発展のためにも求められている。